『同じ器でも少しずつ色が異なるのはなぜ?』カネコ小兵製陶所の場合

(三話掲載の一話目)*「作山窯」「深山」の話はこちらの一覧ページより。

【うつわ、やきもの相談所】では使い手からのご質問に対して、窯元それぞれのものづくりを背景にご回答します。当面はよくある質問のご回答する形となりますが、作り手に聞いてみたいことがありましたら、お問合せ欄よりご連絡下さい。

‐カネコ小兵製陶所の場合‐『美しい色合いに仕上がる事にこだわったから』

カネコ小兵 伊藤社長:釉薬(器の色を決める表面のコーティング)は作業性ではなく、どうしたら美しい色合いに仕上がるかという事にこだわってますが、その分、様々な環境の変化による色の個体差の課題が生じます。例えば、釉薬の濃さや塗り方によっても少しずつ違ってきます。その大きな理由は「窯の中の温度差」があります。最高温度約1300度で焼くわけですが、窯が広いので、窯の中の温度を測定すると場所によって最大で20度くらいの温度差があります。

●約1300度で焼成する窯。体積は約6㎥あり、場所により20度程度差が生じる。

その温度差の中で、できるだけ均質な焼き上げにするために、色によって窯の中の置く位置を調整したりしています。それでも、季節や日々ごとの外気温や湿度は微妙に変化するので、その影響をうけサンプルで出した色と違っていたということはよくあります。なので、そういうことは気を付けながらやっています。うちで一番の焼き色の違いが出てしまう理由は「窯の中の温度の差とその変化」ですね。

●【焼いた後】のぎやまん陶。漆ブラウン、茄子紺ブルー、利休グリーン。艶やかで光沢の色合い

●【焼く前】のぎやまん陶は釉薬のガラス質が付着したマットな質感。

特に気を遣うのは『ぎやまん陶』の色合いですね。最初ぎやまん陶を作ったときは、ちょっと温度が低いと真っ黒になってしまったり、逆に高いと流れやすい釉薬だから流れて棚板にくっついちゃったりして、品質を保つうえで温度管理がとても難しかったです。窯元の言葉では「焼き場を好む」と言うのですが、釉薬に合った場所に入れないと良い色がでません。

●漆ブラウンは特に立ちもの(背の高いうつわ)が難しいとの事。

15年くらい前、ぎやまん陶の最初の荷口サンプルは不良率98%でした。100個作って98個失敗です。ピンホール、異物混入、流れちゃったりだとか、それこそ色だとか。窯位置なんてわからないからばらばらの位置に入れて焼いた。最初はサンプルで5個作って全て良い色で焼けた。次は、これならいいやと思って100個入れたら98個がいわゆる不良でしたね。

それが今の不良率は大体10%以下、モノによっては5%以下です。土を変え、釉薬を変え、いろいろやってなんとかここまで来ましたね。漆ブラウンが一番最初で、これが一番大変でした。その色の幅も今は割と安定して多少の差はあるがいずれもぎやまん陶としてきちんと魅力を持って仕上がっているね。

●カネコ小兵製陶所 伊藤社長

あと、うちの焼成は『還元焼成(かんげんしょうせい。窯の中を酸素量を調整し素材に還元反応を起こし発色する焼き方、高温での焼成が可能で素材が硬く焼き締まる)』です。この焼き方にこだわっているのは、昔は食洗器とかなくて、手で洗っていたので、家内が「気楽に洗いたい」というところから、『丈夫でじゃぶじゃぶ洗える』食器づくりにこだわり、そうしたものを作れる製造方法の範囲でやっていこうと考えています。これしか焼かないと決めて、しっかり焼き締めることができる還元焼成を選びました。(おわり)

(取材後記)根本となるものづくりの方針を大切に、簡単なものづくりに流れることなく、窯の大きさに加え季節や日々の温度湿度の変化で生じる焼成温度の幅を開発する時点から試行錯誤し、その上で日々のものづくりに気を配り、色合いの個体差をできるだけ抑え、製品として出荷する器は色合いの個体差はあってもいずれもやきものとしての魅力を持ったうつわとして生み出す。そうしたものづくりの想いが伝わるお話でした。(柴田)

(2020/12/10)*三話掲載の一話目

*「作山窯」の回答はこちらから。

*「深山」の回答はこちらから

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