第三回の相談所では仕事への姿勢と器の使い方についての二つのご質問に各窯代表がお話します。まず一つ目はH.I様からのご質問
(質問①)「産業としてのやきものづくりでは、多くの人が関わりながら、工程を分担して仕事をされていると思います。そうすると、おひとりおひとりの仕事は、ともすればルーティーン的に、ある区切られた作業をくりかえし突き詰めていくような側面もあるのではと想像します。日々繰り返される仕事に、どういった心持ちで向かっていますか?どのようにして目の前の仕事に集中し、また一方で仕事をよりよくできるように意識を向けられていますか?」
‐カネコ小兵 伊藤社長の場合‐
カネコ小兵 伊藤社長(以下 伊藤):うちは徳利を作っていた時代はほぼOEMだったんです。当時日本一の徳利の生産量を誇ってたけど、作るのは酒屋さんの名前入りの徳利ばかりで工程の繰り返しだからマンネリ化していた部分はありました。
転機は徳利が売れなくなってオリジナルの商品開発を始めてから。お客さんは何を望んでいるんだろう。工場の工程づくりはどうしよう。もっといい焼き物をつくりたい。量産のレベルをもっとあげたい。とか考えてると毎日が緊張の連続でマンネリなんて考えられなくなった。今は全然気を抜けない状況だね。
‐以前小兵さんの工場見学で朝礼を拝見した時、スタッフの方々も前向きな印象を受けました。そういう社長の考えが伝わっているのでしょうか?‐
伊藤:伝わっているかどうかは分からないけど、うちで働いてくれている人たちも良いものを作りたいという想いがすごくあるんですよね。良いものって何かというと安定した品質の製品。例えば施釉工程でも釉薬の度数を精密に調整したり、問題や返品があれば不良会議をして議論をします。いいものを作りたいという気持ちはスタッフからも強く感じますね。
‐偶然そういうスタッフが集まったのですか?‐
伊藤:集まったというより、仕事を通して意識を持って頂けたのかなと、だれでも自分から不良が出たら嫌じゃないですか。うちは不良が出た時、誰が悪いかではなく一生懸命やったにも関わらず何がだめだったのか?と朝礼で全員に共有して対策につなげられるようにしています。
‐伊藤社長だけではなくて、その想いをカネコ小兵全体で共有して仕事に前向きに取り組む、それがまた一人ひとりにとって刺激になりますね。‐
伊藤:もし質問者が同業で役に立つことがあれば嬉しいな。土の枯渇の問題など美濃焼全体で考えたら不良は減らして良いものを作りたいね。
そもそも、美しいものに憧れがあって、焼き物が好きで、さらにカネコ小兵の場合は、型屋さんがいて、釉薬屋さんがいて、外注さんがいて、社員がいて、それではじめて器ができるんですよ。こんな幸せってないと思わない?
‐それは地域や仲間など色んなモノと一緒に憧れのものを作り上げる幸せですか?‐
伊藤:そう。普通、焼き物をやりたいと思っても、土から準備して窯を用意して・・・と大変なことになるよね。でも、ここには地域があり、職人さんがいて、焼き物を作る力がある。それを利用しない手はない。僕だけでは届かなくても、周りの人たちと一緒に頑張れば僕にも世界に通用するものが出来るチャンスがあると思っています。
‐この美濃という地域自身が原動力でもあるのですね。ぎやまん陶やリンカなどカネコ小兵さんは美しいものを作られていますが、「これで完了」ということではないのでしょうか?‐
伊藤:まだまだやりたいことがいっぱいあるよ。型屋さんとか釉薬屋さんとコミュニケーションをとりながら「いいもの」を作って世界中で褒められたいよね(笑)。美濃には良い土があって、色々な器が作れるというのは恵まれているよね。(2021年8月27日掲載)⇒次回、第三回うつわやきもの相談所-作山窯の場合-に続く*9月3日掲載予定(毎週金曜掲載)
(取材後記) スタッフさん・原型師さん・釉薬屋さん・成形屋さんなど日本最大の食器の生産地である美濃焼の地域に点在する出会いと向き合うことが伊藤社長のものづくりの原動力であると共に、きっと伊藤社長自身が他の皆さんの原動力となっている理想的な頼り合いの姿が浮かびました。(深山 柴田)
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