質問④「食器?やきもの?の収納は・・・(前編)」

■第四回うつわ、やきもの相談所 -ギャラリーショップMINOの店長重松さんからのご質問-


 ―質問④「食器?やきもの?の収納は・・・(前編)」―(聞き手:MINO 重松店長、語り手:カネコ小兵 伊藤社長、作山窯 高井社長、深山 松崎社長)

「質問③(後編)」からの続き-

MINO店長 重松さん(以下 重松さん) 最後の質問は食器棚への収納についてです。最近のキッチンの食器棚には引き戸タイプが増えてるそうで、私の家の食器棚も引き戸と開き戸の両方ありますが、引き戸の方が収納し易そうですし、食器が全部見えて料理に合わせてどんな器使おうかと考え易いので、引き戸タイプの食器棚は良いなと思ってるんです。そうした引き戸タイプの食器棚を使われているお客さんからのご相談で、知らないうちに食器が欠けちゃったというものがあったんです。多分ですが、引き戸だと引き出した時に食器も一緒に動いてぶつかって欠けるという事があったのかなと。布やミラマットなどでクッションにするなど基本的には収納の仕方だと思うんですけど、何かいい収納方法があるかな?と思いまして聞いてみました。

●引き戸タイプの食器棚。確かにどんな器が入っているかは見易い。

カネコ小兵 伊藤社長(以下 カネコ小兵): 気になるのは、どういう状態で収納していたのかな?という事ですかね。引き戸じゃなくて開き戸の収納の例ですが、(土岐市)駄知町に食器収納アドバイザーがいて、その人が“やっぱり棚のギリギリまで高く積んだりすると、実際に器には深みがあるから取り出すときに引っかかってしまって倒れる危険があるから、上部には、器の深み分くらいは空間を開けて収納するべきだし、場合によっては皿立を使って皿を縦にして並べる方法もありですよね“って言ってました。

●積み重ねはうつわを取り出せる余裕を。

カネコ小兵:引き戸なら積み重ねは余り関係ないかもしれないけど、皿立は応用できるかもしれませんね。もちろん器の形によるけど、貫入みたいに意図的にヒビを入れるものは別にして、基本的に器に自然とヒビが入ったり、欠けたりする事はない*1からね。引き戸だから必ず割れると言うものではないと思うし、そこに何かの理由があるんだと思うよ。

深山 松崎社長(以下、深山):勢い良く開けすぎて器が動いて欠けたという事なら開け方をご注意頂くしかないですけどね。

●場所をかえてセラミックパークの一室で話す三窯の社長(左より:深山の松崎社長、作山窯の高井社長、カネコ小兵の伊藤社長)

カネコ小兵:破損の原因を大きく分ければ【やきものの性質で割れる】のか【使い方で割れる】かになるけど、やきものは基本割れるものだから、割れない程度の扱いというのがポイントですね。

作山窯 高井社長(以下 作山窯):素材によって硬さ*2は異なりますからね。磁器のものは硬いからいいけど、陶器のものは少し柔らかいからなるべく高く積まないように、隣に少し余裕をもって入れてもらうのが良いんじゃないかな。積み重ねにも間に何か敷いた方が良いかもしれないけど、ミラマットみたいなビニールのものだと水分が残ってしまって、カビが入る事もあるから逆によくないよね。

カネコ小兵:隣との余裕は必要だけど、その隙間を作りすぎると、勢いよく引き出した時に器が動き過ぎてぶつかって割れてしまうから、その隙間に緩衝材として仕切りを入れるなどの工夫してもらった方がいいよね。正直に言えば、【やきものは割れものなので丁寧に扱って下さい】とお願いするしかないよね。

●それぞれの窯元のうつわ。積み重なり方にそれぞれのものづくりの考えが反映されています(その考えは後編でご紹介予定です)

深山:窯元の観点で言えば、器を開発する段階で積み重ねがきちんとできる事を考えて開発してあるかどうかは大きいと思います。この三つの窯元の器では感じた事ないですけど、たまに店頭で積み重ねがすごく悪い製品を見ることがありますから。2022年5月27日掲載)⇒うつわやきもの相談所ギャラリーショップMINO店長重松さんからのご質問その④(後編)に続く・・・*次回月6月10日掲載予定(毎週金曜掲載)*6月3日はイベント出展のためお休み致します。


脚注:*1.貫入は前話の注釈でもご説明した器の釉薬面にのみ意図的に入れる細かなヒビ。これは使っている過程でも増えていく。増える事自体は問題ではない。貫入の器を窯から出すと、「ピン」「ピン」という微かな音と共にどんどんヒビが入っている、窯から出て冷めていく間の収縮でヒビ割れがすすむため。しかし、そこで全て貫入が入る訳では無く、日常使っている間でもたまに「ピン」という音がして貫入がすすむこともあり、それも使う中で変化する貫入の器の楽しみ。このように貫入のうつわには特に何もしていなくても日常生活の中で発生する。しかし、それ以外のやきものにおいては、割れる事や欠ける事が自然に起きる事は無いので、棚の中での破損は何かしら衝撃を受けた可能性が高い。 *2.やきものの器を“柔らかい”と言う表現をすることがある。これはあくまで比較論としての柔らかさの話。決してゴムの様に変形するような柔かさではない。それでは何と比較するか?とというと、その器を使う周辺にある生活道具の素材と比べるとと言うこと。金属の調理道具やカトラリー、人工大理石のカウンターキッチンなどと比較した場合、ガラス質の多い磁器素材の器はそれに対抗できる程度に硬いので傷が付きづらいが、素材が陶器の場合は、傷がつく可能性がある程度の硬さということ。磁器と陶器の硬さの違いは前話の注釈でご説明した原料の成分比の違い、特にガラス質の多寡による。 


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