ポイント④焼いて生まれる!色の変化とグラデーション-選ぶときに編/色を選ぶときは?-

-「やきものづくり図鑑」とは?-

 イベントでの展示として行ってきたこの図鑑でご紹介しているのは「うつわやきもの相談所」に頂いたユーザーからの“やきもの”についてのご質問と、それに対する窯元からの回答から生まれた、ちょっと得する“やきもの”の豆知識。ユーザーだけでは分からない、作り手だけでは気づけない。二つがつながる事であらわになった情報を【うつわを選ぶときに編】と【うつわを使うときに編】としてウェブサイトでもご紹介しています。

●2023年3月のイベント【クラフトキャンプ土岐】での「やきものづくり図鑑」展示風景



-うつわを選ぶときに編-

●色を選ぶときは?

『ポイント④焼いて生まれる!色の変化とグラデーション

–土と釉薬を焼くとは?–

 紙や木の場合は火がついて焼けると灰になります。やきものは焼いても形は残ります。ただ質感や色が変化します。やきものの焼くとは燃やすという事ではなく、高温の熱を加えることで金属物などの原料に化学変化を起こす事です。『ポイント③土と釉薬は施釉で一体に!』で一体となった土と釉薬は焼かれて、いよいよ器となります。

–釉薬の【質感】の変化–

●『画像1』ぎやまん陶。左が釉薬をかけてた状態。右が焼き上がった状態。焼くことで色合いも質感も大きく変化した。

 器の表面を彩る釉薬により「色」と「質感」が表現されます。まず【質感】は光沢感やマット感、”ツルツル”や”しっとり”などと表現されます。これら質感は釉薬内原料が化学変化して生じます。詳しく説明すると化学の授業になってしまうので簡単に言うと、光沢感やツルツルは長石や珪石といったガラス系統の原料を高温で焼き溶けてガラス化し表れます。それに対してマット感やしっとりな質感は、釉薬に粘土を多く調合*1して光沢が出ないように仕上げます。

 –釉薬の【色】の変化–

  次は釉薬の色の変化です。画像1では焼く前と後で明らかに色が変化しています。つまり焼くことで色が変化しています。画像1のカネコ小兵のぎやまん陶*2の色は伝統的には『飴釉(あめゆう)』と呼ばれる和食器や民芸の陶器に使われてきた釉薬ですが、この発色の秘密は釉薬に調合された【鉄分】の影響です。鉄分が焼成による化学変化で茶色に反応したのです。そして同時にもう一つ「色の濃淡やグラデーション」という変化が生じます。特に光沢感のあるガラス質を多く含んだ釉薬の時に生じます。ガラス化のために一度原料を溶かすわけですが、溶けたガラスは重力や応力に従い流れ移動をします。その時に化学変化で発色した原料も一緒に移動します。そうすると流れたところの色は薄く、溜ったところの色は濃くなり濃淡やグラデーションが生じます。

●『画像2』(色の濃淡やグラデーションの例)マグカップの様な立ちものと呼ばれる形は色の濃淡が一層分かりやすい。凸部分は白く、凹部分は濃くなっている事が見て取れる。

‐土の【色】の変化‐

 焼成による変化は釉薬だけでなく土にも表れます。

●『画像3』左右いずれも上は素焼き状態。下は釉薬をかけて焼いた状態。

 分かり易いのが画像3の右側の作山窯のスタイルシリーズ*3です。上ノチャコールグレーの器が焼成前の「素焼」状態で、下がそれに釉薬を施し1200度以上の本焼成で焼き上げ完成した器です。ピンク色や青色の部分は釉薬が掛かっているところで、ここの事は後ほど説明しますが、その上の、本来はテーブルに接地する面。ここはかなり強い黒(こげ茶)になっています。焼く前の素焼きでは薄いチャコールグレーだったのに焼いた後はこげ茶になる。このように、土も焼くことで色が変わりますが、この変化は釉薬の色の変化とは少し理屈が異なります。

●『画像4』スタイルシリーズの土部分の拡大。こげ茶の中に白い粒や塊が見えます。

 画像4はスタイルシリーズの土部分。焼くことによる土の色の変化は、焼成で不純物が減り本来の土の色が強く表れたという事です。正式にいうと土だけで器を作ることはできません。土だけだと焼いても固まらないからです。そのため、土に釉薬と同様の長石や珪石などガラス質を、釉薬と比較するとだいぶ少なく混ぜ合わせ、それを1200度以上で焼くことで溶かして土と土とをくっつける接着剤の役割を果たさせます。そうすることで土は器の形になります。つまり焼く前の素焼きには溶ける前の長石や珪石も含まれていて、その為、土本来の色合いが薄くなります。こげ茶がチャコールグレーになるという事です。それを焼くことでガラス質が溶けて無色や一部は白い粒の様になって表出し、同時に土の本来の色(この場合はこげ茶)がクリアに現れます。

‐「釉薬」と「土」焼いて出す「色」と「質感」‐

 釉薬と土の色と質感は焼く行為を経てさらなる融合を生み出します。釉薬の質感は土の質感に影響を受け特徴を一層露わにし、土の色は釉薬の色のキャンパスになるとともに、土によっては釉薬の色を侵食して表面に現れたり。多様な組み合わせにより、さらに多様な姿を現します。

●『画像5』分かりにくい例:miyamaのパレットプレート青磁。これも見方によっては、土により釉薬はかなり浸食されている。

  画像5はこうした変化が最も分かりづらい白磁の器に青磁釉を施した深山のパレットプレートです*4。敢えて分かりづらい方なのは、これを理解頂けばやきものの色の変化の楽しさの理由がきっとわかると思うから。まずこの器の土は『白磁土』という不純物の少ない粘土にガラス質を混ぜたもの。深山ではこの土を1350度というかなりの高温で焼くので色合いとしてはかなり白い部類に入ります。それに施す淡い青磁釉は透明度が高いため釉薬を通して土の色も良く見えます。純白なので見えていることに気づかないですが、純白であるがゆえにこの淡く美しい青色とその濃淡やグラデーションは表現されます。

‐やきものの価値観で楽しむ‐

 釉薬に個性のあるカネコ小兵の「ぎやまん陶」。土に個性のある作山窯の「スタイル」。どちらにも目立つ個性のない深山の「パレットプレート」。しかし全てのやきものにある「焼けて生まれる色の変化やグラデーション」。このやきもの独自の価値観に気づくと、やきもの選びはもっともっと楽しくなります。”良いもの”より”好きなもの”を選んで頂きたいなと願っています。2023年10月27日掲載)

■関連記事/注釈

*注釈1:土と釉薬の成分内容は実はとても近しく、基本は、形作りに必要な「粘土」と焼き固めるために必要な「ガラス質(長石・珪石)」で調合されています。異なるのはその調合バランス。土として使用するには形を保つために粘土を多くし、釉薬とするためには滑らかに均一に塗布できるようにガラス質を多く調合します。マット釉の粘土を多く調合するというのは、あくまで釉薬にしては少し多くするという程度であり、土に混ぜる粘土とは比較にならないほど少ない。

*2:製品紹介記事「使い手と交わることで育ったカネコ小兵の代表作』ぎやまん陶(カネコ小兵)

*3:製品紹介記事「土ものの良さを大切にした食卓の軸となるうつわ」style(作山窯)

*4:製品紹介記事「鋳込み成型だからできる暮らしを軽やかにする仕切り皿」パレットプレート(深山)



 

【やきものづくり図鑑‐目次‐】*目次ページはコチラ

‐うつわを選ぶときに編‐

【A,色を選ぶときは?】

①やきものの色は釉薬で決まります。(2023年6月8日掲載)

②土の種類で釉薬の発色は変化します。(2023年9月1日掲載)

③釉薬と土は施釉で一体になります。(2023年9月29日掲載)

④焼いて生まれる!色の変化とグラデーション(2023年10月27日掲載)

【B,形を選ぶときは?】

①積み重なりを確認しましょう。*順次掲載予定

 

‐うつわ使うときに編‐

【A,使う前に・・・】

素材を確認!陶器か?磁器か?*2023年6月8日掲載

②陶器なら目止めをしましょう!*順次掲載予定

③表面の仕上がり確認。カトラリーとの相性があります。*順次掲載予定

④裏面を確認しましょう!高台は滑らかですか?

【B,使っている時に・・・】

①電子レンジを使うときには!*順次掲載予定

②食器洗浄機を使うときには!*順次掲載予定

 

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■過去の座談会記事一覧

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參窯その1:カネコ小兵製陶所(岐阜県土岐市下石町)https://www.ko-hyo.com/

參窯その2:作山窯(岐阜県土岐市駄知町)http://www.sakuzan.co.jp/

參窯その3:深山(岐阜県瑞浪市稲津町)http://www.miyama-web.co.jp/


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