ポイント③土と釉薬は施釉(せゆう)で一体に!-選ぶときに編/色を選ぶときは?-

-「やきものづくり図鑑」とは?-

 イベントでの展示として行ってきたこの図鑑でご紹介しているのは「うつわやきもの相談所」に頂いたユーザーからの“やきもの”についてのご質問と、それに対する窯元からの回答から生まれた、ちょっと得する“やきもの”の豆知識。ユーザーだけでは分からない、作り手だけでは気づけない。二つがつながる事であらわになった情報を【うつわを選ぶときに編】と【うつわを使うときに編】としてウェブサイトでもご紹介しています。

●2023年3月のイベント【クラフトキャンプ土岐】での「やきものづくり図鑑」展示風景



 

-うつわを選ぶときに編-

●色を選ぶときは?

『ポイント③土と釉薬は施釉(せゆう)で一体になります!』

–土と釉薬はどうやって交わるのか?–

 『ポイント①色は釉薬で決まる』と『ポイント②土で色は変化するでご案内した通り、釉薬と土でやきものの色は出来上がります。しかし釉薬は液体で、土は固体。性質の異なるこの二つはどのように交わるのか?工場の中でそこを担うのが『施釉(せゆう)』と言う工程です。実際にどのような作業なのかは下の動画でご覧頂けます。

●『画像1』深山のyoutubeに掲載の施釉動画。様々なタイプの施釉を紹介しています。

–施釉(せゆう)工程とは?–

 釉薬を施すと書くこの工程。「釉掛け(ゆうがけ)」とも呼ばれます。動画をご覧頂くと分かりますが、作業としては液体の釉薬に、固体の土(うつわ)を浸して付着させるというものです。一部の釉薬を施さないタイプのやきもの(備前焼や常滑焼*下記注釈1)以外では必須の工程となるこの作業です。

●『画像2』カネコ小兵の施釉工程。“はさみ”という道具を使って器を持ち釉薬に浸す。この浸し方や時間はその釉薬の特性に合わせて調整を行う。

●『画像3』昭和40年代の施釉風景。約50年前の瑞浪市の洋食器メーカーの施釉風景。使う道具は異なるが、現代とほぼ同様の施釉風景。

‐釉薬が付着するために必要な“素焼き”‐

 では何故、浸すだけで釉薬は器に付着するのでしょうか?釉薬を色と表現をしたので、絵具の様に粘着性があって付着するのだと思われるかもしれませんが実はそうではありません。釉薬が器にくっつくのではなくて、器が釉薬を吸いつけるのです。この段階の器は素焼きと言う工程を経ています。素焼きとは800度程度で焼く事でうつわを少し固くする工程です。

●『画像4』素焼き点火風景:窯内の台車に製品を積め、側面のバーナーに点火。この後、窯の蓋を閉じて約800度まで温度を上げて素焼きを完成させる。

 素焼きは海外では「bisquet fire(ビスケットファイヤー)と呼ばれます。素焼きがビスケットくらいの硬さである事に由来しているのかもしれません。

 本題にもどります。この素焼きを行うと、なぜ器が釉薬を吸いつけるのか?それは素焼きをすると器は『吸水力』を持つためです。元々の土には水分が入っていますが素焼きによりその水分が蒸発し、その蒸発した跡が顕微鏡で見ないと分からない小さな穴となり、器は多孔質な状態となります。その状態の器を水分の多い釉薬に浸すと器の小さな穴が水分を吸収し、その水分と一緒に釉薬に含まれる顔料や金属物が器の表面に付着します。これが器が釉薬を吸いつける理由です。

●『画像5』深山の施釉:釉薬から引き出した器の表面に付着する釉薬の顔料や金属類。このあと急速に釉薬は乾燥する。

‐手仕事だからできる調整‐

 ここで最初の動画を思い起こして頂ければと思います。職人は施釉の際にとても細かくを手を動かしていました。これは器が釉薬を吸収する際に生じる色ムラや濃淡を抑えて出来るだけ均一にするための動きです。具体的には、器が釉薬を吸収するまでの間に『余分な釉薬を落とし』『残った釉薬を均一にする』のが、この細かな手の動きです。それをお皿やカップなど器の形に合わせて適切に行う。この施釉という工程がなぜ手作業で行われるのか?それは、こうした器それぞれの特徴や気温や湿度と言った季節の状態に左右される施釉工程を、それぞれの状況で最適な状態で仕上げるためです。

‐濃淡や色ムラはやきものの醍醐味‐

●『画像6』やきものの色の濃淡や色ムラは、やきものであるからこそ生まれるのもの。自分好みの濃淡でやきものをお選び頂けたら、もっと食卓は楽しくなると信じています。

 やきものを選ぶときに、色や濃淡が均一かどうか?*関連記事A同じ器でも少しずつ色合いが異なるのなぜ?『白磁には色の個体差は生じさせません(深山編)』で選ばれることはあると思います。もちろんそうした選び方もありますが、それだけではちょっともったいないなって思ってます。なぜなら、やきものの中には色が均一でない事が面白味なやきものもあるからです。特に和食器や窯変釉、伝統釉の器に見られる濃淡や色ムラ、その個体差は手仕事の証であり、そこにやきものの醍醐味*関連記事Bそれぞれの窯元の凄味『やきものらしい色合いの表現(作山窯編)』があるのだと思います。

 ‐焼き上がってやきものとなる(ポイント④に続く)‐

 さて釉薬と器が一体となったので、次はいよいよ『焼成工程』です。釉薬にこだわり、土との相性を考え、それらが一体となった時に、どんな風に焼き上がるのか?次の章となるポイント④焼いて生まれる!色の変化とグラデーション。ではその内容をご紹介します。2023年9月29日掲載)

■関連記事

*注釈1:元来、釉薬は汚れ防止の役割があります。釉薬の無い土だけの状態だとその表面には顕微鏡レベルの小さな穴があり、その穴に汚れが入ってしまうと落とすことが出来なくなります。そのため、表面をガラスコーティングで覆い汚れを防ぐ役割が釉薬です。しかし備前焼や常滑焼は釉薬の無い「無釉(むゆう)」と言う状態で仕上がり、それでは汚れの染み込みをある程度防ぐことができます。それはなぜかと言うと、この2か所の土には成分と粒度に特徴があります。まずこの2か所の粘土は粒度が非常に細かく器として固まった時も隙間があまり生じません、そのうえ土の中に鉄分が多く含まれており高温で焼成すると鉄分が溶けて残った隙間にも溶けて流れて埋めていくため土だけでも汚れが染みつきにくくあります。こうした素材の特徴からこの二つのやきものは釉薬を施さなくても汚れづらいやきものとなっています。

*A、同じ器でも少しずつ色合いが異なるのなぜ?『白磁には色の個体差は生じさせません(深山編)

*B、それぞれの窯元の凄味『やきものらしい色合いの表現(作山窯編)』



 

【やきものづくり図鑑‐目次‐】*目次ページはコチラ

‐うつわを選ぶときに編‐

【A,色を選ぶときは?】

①やきものの色は釉薬で決まります。(2023年6月8日掲載)

②土の種類で釉薬の発色は変化します。(2023年9月1日掲載)

③釉薬と土は施釉で一体になります。(2023年9月29日掲載)

④焼いて生まれる!色の変化とグラデーション(2023年10月27日掲載)

【B,形を選ぶときは?】

①積み重なりを確認しましょう。*順次掲載予定

 

‐うつわ使うときに編‐

【A,使う前に・・・】

素材を確認!陶器か?磁器か?*2023年6月8日掲載

②陶器なら目止めをしましょう!*順次掲載予定

③表面の仕上がり確認。カトラリーとの相性があります。*順次掲載予定

④裏面を確認しましょう!高台は滑らかですか?

【B,使っている時に・・・】

①電子レンジを使うときには!*順次掲載予定

②食器洗浄機を使うときには!*順次掲載予定

 

〉〉〉「うつわやきもの相談所」



〉〉〉「三窯行えば、必ず我が師あり」

■過去の座談会記事一覧

〉〉〉第六回座談会『他産地、他素材のものづくりに触れて-日進木工(高山市)-』アーカイブはこちらから

〉〉〉第五回座談会『野口さんとふりかえる2021年』アーカイブはこちらから

〉〉〉第四回座談会『美濃焼について思うこと』アーカイブはこちらから

〉〉〉第三回座談会『作り手の大切な器、我が家の食卓』アーカイブはこちらから

〉〉〉第二回座談会『作り手として感じる、それぞれの窯元の凄味』アーカイブはこちらから

〉〉〉第一回座談会『參窯のはじまり』アーカイブはこちらから


〉〉〉■ご意見、ご感想、お問合せはコチラから


・・・・・各窯元ウェブサイト・・・・・

參窯その1:カネコ小兵製陶所(岐阜県土岐市下石町)https://www.ko-hyo.com/

參窯その2:作山窯(岐阜県土岐市駄知町)http://www.sakuzan.co.jp/

參窯その3:深山(岐阜県瑞浪市稲津町)http://www.miyama-web.co.jp/


・・・・・參窯ミノウエバナシ contents・・・・・

●ブログ「三窯行えば、必ず我が師あり」

●ブログ「うつわ、やきもの相談所」

●作り手に聞いてみたかったことがある》》》 ご質問はコチラへ

●オンラインストア「outstanding products store」

 ●イベント案内「歓迎/出張ミノウエバナシ」

産地でのファクトリーツアーや消費地でのワークショップなど、リアルなイベントのご紹介です。

●參窯(さんかま)へのお問い合わせは 》》》 こちらへ



 

関連記事

PAGE TOP