『同じ器でも少しずつ色が異なるのはなぜ?』深山の場合

(三話掲載の三話目)*「カネコ小兵製陶所」「作山窯」の話はこちらの一覧ページより。

【うつわ、やきもの相談所】では使い手からのご質問に対して、窯元それぞれのものづくりを背景にご回答します。当面はよくある質問のご回答する形となりますが、作り手に聞いてみたいことがありましたら、お問合せ欄よりご連絡下さい。

‐深山の場合‐『白磁だけは色の個体差を生じさせません』

深山 松崎社長:深山は透明感のある『白磁(はくじ)』の洋食器製造から始まり、現在でも製造の半分近くは白磁で、創業来その色合いを均一に安定的に焼き上げるために全ての工程を構築してきたので、白磁については現在でも色の個体差はほとんど無いです。ただ近年は窯変釉(ようへんゆう)を代表とする色や雰囲気のある釉薬の要望も増えたため、白磁を焼く窯で、これらその他の釉薬を焼く難しさを実感しています。

●奥に見えるのが窯。1号、2号、3号と三つの窯で焼成。手前の器を置いているところが台車。

僕らには窯が3機あって、3窯それぞれで色の違いが出てしまう可能性も十分にあったり、季節による外気温の変化で焼けすぎてしまったり逆にそうでなかったりとか、また製品を積む台車に積んだ製品の総重量によって変化があり焼成状況が大きく変わるなど、複合的な理由で窯ごとの違いが生じます。それぐらい微妙なところが焼き物だと考えています。

●窯変釉のひとつ『白マットスペ釉』。マットな質感の中にキラキラした結晶が表れる。

例えば、窯変釉の一つに白マットスぺという釉薬があり、マット状の白い釉薬の中にキラキラした結晶のような輝きがある釉薬で、焼成状況によりマット感や結晶感に変化が生じる釉薬でした。その釉薬を別の窯元さんが使いたいというご依頼があり、弊社での焼成条件などもお教えして使って頂きましたが弊社と同じようには仕上がらなかったという事があり、改めて焼成により変化する釉薬は難しいものだと感じました。

●深山の窯変釉(左より「海鼠(海鼠)釉、白窯変(しろようへん)釉、織部マット釉』

量産品とか工業製品という言葉を使ってしまうと色が揃っているのが当然という解釈になっちゃうんだろうけども、実は原料もほとんど天然のもので、安定させる幅がすごく狭いので、色が合わないことがしばしば起きるのが普通というところで、それをどうやったら皆さんに満足していただける幅に収めるかというのはいろいろ考える余地があるのかなと思います。

深山はOEM製造(相手先ブランド委託製造)も多いため、自分たちとしてもかみしめないといけないなと思うのが、そうした開発の段階でお客さんの意向に沿って作るのですが、温度や湿度、設備の変化など焼成条件は一年を通して変わるので、毎月安定して出し続けることができるのかというとそうではない場合も多く、そうした釉薬だった場合はお客さんに申し訳ないですけど正直に言わないといけないなと思います。(おわり)

●深山 松崎社長

(取材後記)最後にカネコ小兵の伊藤社長から「同じやきものでも、土ものなんかで登り窯や穴窯で焼いたりすると、自然に灰をかぶって焼きあがった見た目の違いが出ることをポジティブに「景色」と呼んでいる。」というお話がありました。工場で作っているとはいえ素材は天然の土。それを炎を焼き、そこから自然と生まれる風合いがやきものの味わいだとすれば、均一に焼き上げること以外にも良いうつわとしての価値観があるのではないかと考えさせられました。(柴田)

(2020/12/10)*三話掲載の三話目

*「カネコ小兵製陶所」の回答はこちらから。

*「作山窯」の回答はこちらから

 


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