『作り手として感じる、それぞれの窯元の凄味』深山編①銅版転写下絵付けの精度

『作り手として感じる、それぞれの窯元の凄味』作山窯編四つ目:やきものらしい色合いの表現から続く


―作山窯とカネコ小兵から見る深山の凄味―(語り手:作山窯・高井社長、カネコ小兵・伊藤社長、受け手:深山・松崎社長)

『一つ目:銅版転写下絵付け技法の精度』

【銅板転写下絵付け技法により絵柄を施したsasasaシリーズのうつわ。竹林のようなストライプが絵柄部分】

伊藤社長:僕が徳利をやっていたとき*1は、作山の存在も深山の存在も知らなくて、このまま徳利だけをやってたらいいと思っていた。けど、徳利が売れなくなって食器をやりだしてからは深山、作山は憧れやったもんで、2社のいろんなエキスを学びたいと思っていた。

『銅版転写下絵付け技法:(上)銅版で絵柄を印刷した転写紙、(下左)素焼きの器に転写紙を合わせて水を含んだ筆で抑ええる、(下右)転写紙を剥がすと絵柄のみ器に残る。製品はsuuun柄8oldglass.

伊藤社長:深山で言うと銅版貼る技術*2がすごい。(小兵では)徳利の印もの*3として酒造メーカーのロゴの銅版貼っていた。いろんな全国の蔵元のロゴの銅版を5,6人が貼ってやっとったよ。で、深山の商品のような緻密な銅版貼るとものすごく手間がかかるわけよ。曲面だから貼っていくと皺が寄ったりするんだけど、それが全くないのがすごい技術だと思う。

『(左)工場裏にある陶原祖の石碑。瑞浪市稲津町での器づくりが始まった場所。後ろのスレートが深山の工場。(右)里泉焼(りせんやき)の器。』

松崎社長:これは側面と底面と二つの銅版に分かれてるんですけど、よく見ると確かに境目があるんですけど、これ手前味噌ですが本当にピタッと貼れてますね。

伊藤社長:特に曲面に貼るっていうのが難しい。まっすぐ貼ったつもりがぐにゃっと曲がってしまう。我々でいうと回し貼り*4って言って、徳利に巻くときは銅版の絵柄の周りをいっぱい切って、シワのないようにするっていうのが結構な技術で相当難しいから、それを一つずつきれいに貼れてるっていうのがすごいな。この“sasasa“シリーズの銅版の貼り方は頭が下がります。

『(左)回し貼りについてジェスチャーを交え説明する伊藤社長と、側面と底面の2回貼りについて説明する松崎社長』

司会:この製品、私が開発したんですが、最初はこんなに上手くなかったんですよ。今でもたくさん数出来るわけじゃないんですけど、当時はもっと数が出来なくて。現場の職人が試行錯誤しながらやってくれて、ある日、現場に行ったらびっくりしました。教えることがなくなったというか。

伊藤社長:現場の人がそうやって考えて、一生懸命やっていただいたっていうのは大きいよね。それで技術が上がったわけだから。我々だとそういった注文が来ると「これはできない」と断るんだけど。それを断らずにやってみようっていうのがすごいよね。

『(左)焼成前、(右)焼成後。柄の部分が緑色に光沢を持って発色し、その間の白い部分には素材のマット感が残こる』

 

松崎社長:これはでもやっぱりあれかな。自分たちから作って出てきたから頑張れたかもしれない。お客さんにこれやってって頼まれてたら「できません。」*5って言って断っちゃうレベルだと思います。

伊藤社長:この銅版貼りの技術は今はもう深山の顔なんじゃない?

松崎社長:工場の中で加飾を担当してくれている人が一日銅版を貼るために出社できるくらいの、ある一定の仕事はありますね。

『絵付け工程:日々の作業を行いながら、工程や道具を一手一手、最適手を積み上げる。』

(2021年3月1日掲載〉〉〉(深山その2「ガバ鋳込み成形で器を整える」に続く)

(注釈)*1、カネコ小兵が徳利を生産していた時代の話は『參窯のはじまり その①』にて *2:絵付け技法の一つ。上記画像参照。銅板転写下絵付け技法。約150年前の弘化三年、瑞浪市稲津町の現在の深山の裏手にあった里泉焼(下記画像)などが日本で初めて試みたクラッシックな絵付け技法。絵柄を彫り込んだ銅の板を使い印刷した和紙の転写紙を使う。器の上に転写紙を配置して、その上から水をたっぷり含んだ筆で押さえて、和紙から絵柄を剥離させ器に移しとる。その際に滲みや皺が生じやすく難度が高い。【動画はコチラから*インスタにリンクします】 *3:印ものの「印」とは屋号やロゴの事。当時のカネコ小兵では酒蔵や料理店ごとに名前入りの徳利を生産していた。 *4、転写紙の貼り付け技術。徳利やカップの側面に一周ぐるりと銅板転写で絵付けする事。曲面に貼ると皺が生じるが、和紙の伸縮性を利用して絵柄の無い部分に皺を寄せて、絵柄の部分は皺にならないようにするには高い練度を要する。 *5、あくまで新しい技術を開発する事は全て受け入れる事は難しいという話。決してお客さんの注文は何でも断る訳では無い。新技術開発はどうしても最初は不良率が高く足踏みをしてしまう。社内企画であればいつまでにという期限を設けずにコツコツとできるため。既存技術でのお客さんとの製品開発は積極的に行いますのでお気軽にお声がけ下さいとの事です。


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