『作り手として感じる、それぞれの窯元の凄味』カネコ小兵①ぎやまん陶をぎやまん陶として保つために

『作り手として感じる、それぞれの窯元の凄味』深山編四つ目:職人が支える白磁としての器の仕上がりから続く


―深山と作山窯から見るカネコ小兵の凄味―(語り手:作山窯・高井社長、深山・松崎社長、受け手:カネコ小兵・伊藤社長)

『一つ目:ぎやまん陶をぎやまん陶として保つために』

松崎社長:やっぱり、何といっても、ぎやまん陶*1ですね。まずこの形があって、その上でこの形に調和した釉薬の薄い濃いをきちんとコントロールして作り上げていること。それが出来ているのがすごいですね。これ二重に施釉*2して釉薬の層を厚くする事でこの濃淡や透明感を生み出しているんですか?(*1.カネコ小兵を代表するうつわ「ぎやまん陶」を示す。詳しくはoutstanding products store「ぎやまん陶 楕円焼物皿」をご参照下さい。)(*2.一度釉薬を施した後に、もう一度施釉する事。施釉は素焼き状態の器の吸水性を利用して行うが、吸水の許容量は器の厚みが限度であり、一度で釉薬を厚く施すことは難しい、そこで、一度施釉した器が乾燥し吸水性が戻った後にもう一度施釉することで釉薬の厚みを2重にする。一回目の施釉後に乾燥まで待つ必要があるなど産業の製造としては手間がかかりあまり行われない。釉薬の詳細は作山窯編*21を参照)

伊藤社長:釉薬によってだね。一番新しい色がこの『墨ブラック』なんだけど、これが難しかった。黒色を発色するには緑の色素から攻めるか青の色素から攻めるかしかないんだけど、いずれにしても複数の顔料を調合しないと黒にならないけど、そうすると色素が多い固い釉薬*3になって流れが悪い*4んだよ。(*3.釉薬における固いというのは硬度の事ではなく、動きが固いという意味。つまり、溶けた時も流れにくいことを示す。)(*4.釉薬は、調合の中のガラス分が多いほど流れ易く濃淡が生まれ易い。しかし黒色を出すには緑にしても青にしても多量の色素が必要となり、結果としてガラス質の割合は減る。黒色は釉薬の流れが悪くなるため、*2の二重の施釉により釉薬を厚くして流れ易く、濃淡が生じやすくする必要がある。)

高井社長:ぎやまん陶が誕生したころから見ていますが、その頃を思うと、言い方悪いかもしれませんが、今のぎやまん陶はすごく綺麗になってますね。初めのころはロスや不良品が大量に出る*5とか激しく釉薬が流れちゃうとかいろいろ苦労されてるお話をお伺いしてたんですけど、最近のものは完成度高いですね。ここまでのものはうちではできないですね。(*5.ぎやまん陶開発時のロスについては「うつわ、やきもの相談所」同じ器でも少しずつ色が異なるのはなぜ?カネコ小兵の場合をご参照下さい。)

伊藤社長:ぎやまん陶を製品としてきちん販売開始したのが2009年だから開発から10年ちょっと経つんだけど、作り続けてきた事で何となく分かってきたというのがあるね。「ぎやまん」っていうのは「ガラス」という意味だから、ガラスの様に透明感が出るようにやってきたんだ。そして、このぎやまん陶 楕円焼物皿*6が一番最近開発した製品だけど、これは一つの完成形になったと思ってます。。(*6. outstanding products store「ぎやまん陶 楕円焼物皿」をご参照下さい。)

『ぎやまん陶 楕円焼物皿を手にする作山窯の高井社長(左)と耳を傾けるカネコ小兵の伊藤社長(右)』

松崎社長:ぎやまん陶を作るための石膏型は、早めに取り換える*7んですか?(*7.ぎやまん陶は石膏型による圧力鋳込成形で生産される。この石膏型は使用に準じて摩耗するため、型を使うほど製品が少しずつ大きく重くなる。そのため、石膏型は使用回数を基準に新たな型に変える必要がある。)

伊藤社長:80回転*8くらいしたら新しい石膏型に取り換えるかな。アイテムによって多少変わってくるけど花弁状のレリーフのエッジが型が摩耗して甘くなると釉薬の輝きがだんだん失われてくるからね。他にも、製品が重くなったり、成形している時の泥の流れが少しでもおかしくなったら取り換えるようにしてる。費用はかかるけど、型を良い状態で使用する。その点はこだわってるね。(*8.石膏型を変える回数は窯元のスタイルにより異なる。窯元によっては300回まで使用する事もあり、そのあたりが最大値かと思われる。鋳込み成形を専門にしている深山の場合は100回ほどで変える。石膏型が摩耗すると、大きさや厚みが増すことに加えて、表面のレリーフが薄くなってしまうため、ぎやまん陶では80回というかなり早いタイミングで変えるとの事。)

『ぎやまん陶のフチに顔料を筆塗りする工程』

松崎社長:80回での取り換えは早いですね。あとはこれ、お皿のフチにも顔料を塗って*9るんですか?(*9.ぎやまん陶の釉薬は流れることで美しい濃淡が表れるが、流れすぎるために器のフチは色が抜けすぎて素地の白色が出てしまい釉薬の色合いとのアンバランスが生じるため、フチに顔料を塗り釉薬との調和を生み出す。)

伊藤社長:そうそう、塗ってるよ。デザイン的に締めた方がいいと思って。

松崎社長:この一手間があると印象が締まり*10ますね。(*10.ぎやまん陶は、形状の変化を抑えるため石膏型の使用回数を最小限とし、釉薬の流れをよくするため二重掛けを行い、全体の色合いの調和のためにフチに顔料を塗る。いずれも通常の製造工程では手間が掛かり避けたくなる工程を、ぎやまん陶の精度のために行っている。ぎやまん陶の美しさは、これら目に見えない一手間により生じる。)

『フチへの筆塗りで仕上がるぎやまん陶』

(2021年3月26日掲載)

〉〉〉(カネコ小兵その2「窯元禁断の本物の飴釉」に続く)


〉〉〉「三窯行えば、必ず我が師あり」一覧に戻る

〉〉〉■ご意見、ご感想、お問合せはコチラから

 


・・・・・參窯ミノウエバナシ contents・・・・・

●ブログ「三窯行えば、必ず我が師あり」

●ブログ「うつわ、やきもの相談所」

●作り手に聞いてみたかったことがある》》》 ご質問はコチラへ

●オンラインストア「outstanding products store」

 ●イベント案内「歓迎/出張ミノウエバナシ」

産地でのファクトリーツアーや消費地でのワークショップなど、リアルなイベントのご紹介です。

●コラム「ノグチサンのミノウエバナシ」

●參窯(さんかま)へのお問い合わせは 》》》 こちらへ



 

関連記事

PAGE TOP