(第11話)『作り手だからできる事‐SDGs考‐』‐美濃焼について思うこと‐

『美濃焼について思うこと』*第10話「いったい何を企画するのか?」から続く


―(第11話)作り手だからできること‐SDGs考‐―(語り手:カネコ小兵 伊藤社長、作山窯 高井社長、深山 松崎社長)

深山 松崎社長(以下 深山):話は変わるけど深山はGL21(GreenLife21)*1という活動に参加してます。20年近く前から行っているリサイクル粘土のプロジェクトで窯元、問屋、研究所などがチームとなって活動していますが、現在SDGsの影響で今までになく熱を帯びている状態です。しかし同時に販売促進のためのロゴマークをつけるだけのプロジェクトになってはならないという危機感もあります。この注目される機会にこそ、たとえばリサイクル素材をブランド化する事などでプロジェクトの意図を明確にするなど、活動内容をより深く検証するべきだと考えます。ただやはり、このプロジェクトは難しいなと感じてます。

●素焼き前の成形不良よる粘土。この時点であれば、そのまま粘土に戻すことが出来るが、素焼き、本焼きを行うと粘土の状態には戻れないため、粉砕してリサイクルする必要が生じる。

カネコ小兵 伊藤社長(以下 カネコ小兵):価値観が異なる色んな考えの人が集まるから難しいね。社会貢献に軸を置くのか、ビジネスを軸に置くのかで大きく異なるから。でもやっぱり、20年近く行っているプロジェクトが、なかなか浸透していないのはなぜか?と言うことからしても、何かしら課題があると思うよ。

作山窯 高井社長(以下 作山窯):ビジネスが軸になるとプロジェクトの活動には際限がでてくるよね。プロジェクトが浸透しなくても商売がまわる範囲内だけやっていられれば良いからね。

カネコ小兵:GL21も当初は岐阜県セラミック研究所*2などがしっかり研究して、多くの窯元がものづくりに挑戦してたよね。頑張ってやってきて、だけどいまだに広がらないのはなぜかって話だよね。SDGsだから急にもう一回頑張るぞじゃなくて、活動を振り返って課題を検証しないとね。

●産地内に点在する公設の陶磁器研究開発施設。日々新たな技術開発や研究、品質の試験などが行われている。

作山窯: 再生土(リサイクル粘土)へのリサイクル成分含有率*3aは今どれくらいなの?

深山:産業として安心して使えるレベルの粘土だと20%ですかね。

カネコ小兵:僕もかつて試作してたけど、成形時にコテが減り易いなどの問題や釉薬の発色が悪かった*3bね。その頃は、九州の有田地区や愛知県の瀬戸地区でもリサイクルの取り組みをしていて、それらとリサイクル原料の含有率を競争していたよ。でも僕は、そんな産地間の競争みたいに含有率を競うのではなくて、たとえ含有率は5%でもいいから手掛けるべきは、消費者からの回収で見た目の廃棄を減らす事だけじゃなく、自分たちの工場で出る不良品も再生する事だと思ってた。

深山:そうなんです。消費地からの回収も良いけど、生産地で出る不良ってめちゃくちゃありますからね。それをどうにかするのも大切だと思うんです。ネットでアウトドアブランドのパタゴニアによるプレコンシューマー・リサイクルについての記事を読んだけど、製造の過程で出た不良をもう一度戻してやるってこと。

司会:それを窯元だけで行う事は難しいですか?

深山:現状は窯元だけでは難しいですね。不良品の粉砕にも技術やコストが掛かりますから。しかし粉砕業者さんだけでも難しくて、粉砕後に引き取られない大量の粉砕品があふれ困っているそうです。そういう意味でも、陶磁器業界や“やきもの”でのリサイクルで考えるだけでなく、それ以外の利用法も検討し出口を生み出してはじめて、陶磁器の本質的なリサイクルが検討されると思います。いずれは実現したいですね。

作山窯:現在の活動は消費地から回収している事がポイントになってる。だからどうしても一般からの回収が重要で、生産地での不良品は気にしないんだろうね。

●作り手として必要な事は何かをかたるカネコ小兵の伊藤社長(右)と作山窯の高井社長(左)

カネコ小兵:もし「カネコ小兵がSDGsどういう取り組みしてますか?」って聞かれた時、「リサイクルの粘土を買って作ってます。」て答えだけでは、大丈夫か?って思う。何か取り組みたいなと思ったけど、自社の不良品に対して取り組めていないのに、リサイクルの粘土を買ってきて作っているからリサイクルに取り組んでいますよ!では何か違わないかなと思うんですよ。まず自分たちが生み出している不良品を何とかしてないと説得力が無いような気がする。窯元によるリサイクルやSDGsにはそういうところが問われるんじゃないかなと思う。

作山窯:目先のちょっとした何かに飛びつくのはとっても危険だと思う。

カネコ小兵:自分たちで製造できる窯元だからこその考え方かもね。

司会:窯元にはその可能性があるということですね。2021年12月10日掲載)⇒第四回座談会「(第12話)美濃の産地の危機的課題?(仮)」に続く・・・*次回12月17日掲載予定(毎週金曜掲載)


脚注:脚注:*1. 正式名「グリーンライフ21プロジェクト」1997年、岐阜県セラミックス研究所(試験研究機関)の呼びかけにより、企業、行政などが集い活動をはじめる。回収、粉砕・原料化、製土・製陶、物流、販売、使用といった食器の全ライフサイクルで環境負荷低減を実現するために、実験、研究を重ねる。http://www.gl21.org/history.html *2.陶磁器に関連する技術開発や支援、試験を行う岐阜県が運営する施設。この施設に加え美濃焼産地となる多治見市には多治見市陶磁器意匠研究所が、土岐市には土岐市陶磁器試験場セラテクノ土岐が、瑞浪市には瑞浪市窯業技術研究所とそれぞれ市営の研究施設があり、民間企業と連携している。 *3ab.リサイクル粘土に含まれる製品を粉砕した粉の割合を示す。陶磁器は焼成の際に10~15%程度収縮する。しかし粉砕の粉は既に焼成されたものの為、収縮しない。そのため含有率が多すぎるとキレなどの不良の発生原因となる。その他にも粉砕粉を含んだ粘土の問題点として、伊藤社長が言う「成形時のコテが減り易い」とは、成形する際に粘土を押さえるための治具を「コテ」と呼ぶが、そのコテが、粘土の中に含まれる硬度の高い粉砕粉によって削れてしまい擦り減ってしまうという事。「釉薬の発色が悪い」のは粉砕の元となる食器は色で分別される訳では無いため、その内容によっては色がついた粉砕粉が含有され発色に影響するという事。これらの課題をより技術的理論的に解決する為に、このリサイクル粘土のプロジェクトには岐阜県セラミックス研究所など公設の研究機関が加わっている。


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