『作り手として感じる、それぞれの窯元の凄味』カネコ小兵③ロングライフな器を目指したこだわり

『作り手として感じる、それぞれの窯元の凄味』カネコ小兵編二つ目:窯元禁断の本物の飴釉から続く


―深山と作山窯から見るカネコ小兵の凄味―(語り手:作山窯・高井社長、深山・松崎社長、受け手:カネコ小兵・伊藤社長)

『三つ目:ロングライフな器を目指したこだわり』

司会:小兵さんのものづくりは、ぎやまん陶リンカのように一つのシリーズをブラッシュアップ、マイナーチェンジしながら、とても継続的に行われているイメージがありますが、そうしたものづくりのスパンは何か意識されているんですか?

伊藤社長:結局は商品のライフサイクルをどう考えるかだと思うんだよ。で、出来るだけロングライフにしたいと考えてるんだよね。流行を追うと最初は食いつくけど、すぐにサッとひいちゃう。新しい感覚はすぐ飽きられちゃう可能性もある。タジン鍋*17なんかいい例だね。でも例えば漆は古来からあって日本人になじみ深く感じるし、製品としての寿命も長いんじゃないかなと思った。ぎやまん陶の漆ブラウンは、その日本人にとって安心感のある漆の世界観に、電子レンジでも使える*18とかの機能性が加わってるから長く使ってもらえるんじゃないかなと思ってる。(*17.2010年頃にブームとなったモロッコの土鍋。ブームになるやその形だけを模倣し機能面で物足りない製品が乱造され、結果、本来のタジン鍋の魅力が損なわれ、急速にブームが終焉した。)(*18.カネコ小兵の器は素材に磁器を使うことで電子レンジの使用可能な強度を確保している。その理由は『同じ器なのに少しずつ色が違いのはなぜ「カネコ小兵」の場合』参照)

『ロングライフな器となる事を基準にものづくりをこだわったぎやまん陶シリーズ』

伊藤社長: そもそもだけど商品開発に関しては、そんなに無いわけよアイディアが(笑)。だからせっかく開発した商品は、できる限り寿命を長く保たせたい長く愛されたいというのが僕の気持ちだね(笑)。

松崎社長:それはそうでありたいと思いますよ。形状は少なくてヒット商品としてロングライフになったら、それが絶対的にいいですよ。うらやましい(笑)

伊藤社長:企画が重要な商社の場合はどうしても連続的に*19a商品開発をせざるを得ないやん。でも我々はメーカーだから作り手としてせっかく開発した商品の発信*19bするなら、使って頂けるスパンを長く考えて、どんな時代でも愛されるようなロングライフなモノづくりをするべきだし、行っている。その方が、作り手としてのこだわりをきちっと伝えられるからね。(*19ab.メーカーである窯元には、それぞれ得意技術があり、それにより器を丁寧に製造する事で差別化が可能だが、製造設備の無い商社の場合は企画で差別化する必要が生じるため、メーカーと商社では開発の方向性やスピード感が必然的に異なる。)

松崎社長:ぎやまん陶が愛される魅力の一つはこの色合いだと思うんですけど、ここにもこだわりがあるんですか?あと他の色の開発は考えないんですか?例えばグレーとか?

『漆ブラウン(左手前)、茄子紺ブルー(右手前)、利休グリーン(中央)、墨ブラック(左奥) 現在の4色』

伊藤社長:色はね、いまは、「漆ブラウン」「茄子紺ブルー」「利休グリーン」「墨ブラック」の4色があって。それぞれの色ごとに好まれる方がいる。もちろん一番は「漆ブラウン」だけど、「ディオール」なんかは漆ブラウンは嫌い、でも茄子紺ブルーは好きっていうわけよ。こういう深い青*20っていうのはフランスの人にとってはロイヤルブルーというか憧れの色みたいよ。他にも「墨ブラック」は男性人気が高かったりと、色による好みの違いは面白いね。(*20.深い青色はコバルトと呼ばれる原料により発色される。このコバルトから生まれる色合いと磁器の白さの調和は、欧米ではBlue&White 、日本では染付、中国では青花など様々な呼び名で最高の相性とされており、その中でも上質なコバルトと白磁土による器は最上級とされる)

『釉薬を塗る際に使う器をはさむ道具【ハサミ】。左は施釉時の使い方、右は器に合わせた多様なハサミ』

伊藤社長:ぎやまんであるからにはガラスの様な質感が大切で、青白磁みたいな薄い色*21aだと深みが足りない。だから奥行きがある濃い色*21bにこだわってやってきたんです。4色以外にも「紫」とか「琥珀ブラウン」とかは試作してみた。最終的には七色のぎやまんを作りたいのよ。「琥珀ブラウン」なんて一度テレビにも取り上げてもらって「次はこの色ですっ!」って言っちゃった(笑)、でも実は未だに完成してないわけよ。色の雰囲気までは出来たけど、色ムラの安定が難しい。色んな持ち方で施釉を試したり、器をはさむ道具のハサミを色々試したり変えたりしたけど、特に大きなサイズほどどうしてもムラになっちゃう。釉薬屋さんに相談すると、2分くらいかけて一定のスピードでゆっくり釉薬にくぐらせるといいらしけど。一定を保つために2分息止めて釉薬にくぐらせるのは厳しいからどうしてもできなかった*22。あと「紫」は焼き方の問題があった。酸化焼成*23aでなら発色するけど、ぎやまん陶は素材の強度を保つためにも高温な還元焼成*23bで焼くが、この焼成方法で紫を発色するのはなかなか難しくて・・・。でも、難しい難しいばかり言ってても仕方ないから、まずは何とか琥珀ブラウンを完成させて5色を目指してる。(*21ab.ぎやまん陶の色合いは、単純に表面のガラス質だけを溶かして現れる透明感ではなく、鉄分やコバルトなど原料そのものも溶かしてガラス質と融合させ、あたかもガラスの塊のように深みをもって生み出す。)(*22.琥珀色を濃く発色するには釉薬を均質にたっぷりと施釉する必要がある。一般的な施釉方法では、スピードが速すぎで均質にならず色ムラが生じる。施釉ハサミという器を挟む道具を使っても色ムラが生じる。2分くらいかけてゆっくりと釉薬に浸すと均質になるが、一息で行わないと手の揺れでムラになるので、人間の生理学的に不可能。)(*23ab.やきものの焼成方法の主要なものが「酸化(さんか)焼成」と「還元(かんげん)焼成」。技術的な特徴はとても難しいので機会がある時にご紹介します。今回は特徴のみ。「酸化」は色の発色に優れた焼成方法。「還元」は素材を固く焼き締めるのに優れた焼成方法。カネコ小兵では「丈夫でジャブジャブ使える食器」づくりを大切にするため「還元」での焼成を行っている。)

高井社長;時間をかけてでも求める姿を目指すこだわりがあるからこそ、ぎやまん陶の世界観が出来上がっていて、その世界観に共感する使い手がいらっしゃるからロングライフになるんですね。きれいです。(2021年4月16日掲載)

〉〉〉(カネコ小兵その4「作り手として器を完成させるために」に続く)


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