『作り手として感じる、それぞれの窯元の凄味』カネコ小兵編④作り手として大切なこと

『作り手として感じる、それぞれの窯元の凄味』カネコ小兵編三つ目:ロングライフな器を目指したこだわりから続く


―深山と作山窯から見るカネコ小兵の凄味―(語り手:作山窯・高井社長、深山・松崎社長、受け手:カネコ小兵・伊藤社長)

『四つ目:作り手として大切なこと』

司会:最初の頃にお話しがあった楕円焼物皿が完成形*24いうのは?(*24.『作り手として感じる、それぞれの窯元の凄味』カネコ小兵編①参照)

伊藤社長:ぎやまん陶の開発をまず丸い形状からスタートしたとき、実をいうとこの「花弁の数」に規則性はそれほどなかったのよ。3寸皿、4寸皿、4.5寸皿と開発したけど花弁の数や大きさは感覚的に調整していた。時には大きくなったり小さくなったり、最初のころは自分としてもあまり分かってなかった。でも、その後もいくつもサイズを作ってくると分かってきた事があって、それは、【花弁のレリーフの間隔をある程度狭めた方が輝きが良くなる*25aという事と【深さや高さから変化する釉薬の垂れ具合】、どういう形にしたら、釉薬はどこへ向かって流れるのか*25bといったものが分かってきてこれが大きかった。

『ぎやまん陶の最新作【楕円焼物皿】。経験に基づいたぎやまん陶の良さを最大限あらわすうつわ』

それを踏まえて次を開発する時に、ぎやまん陶の良さを表現する形として単純な丸い形ではなく、場所による花弁の長さや深さが変化するこのオーバル(楕円)形が多様な釉薬の変化が表れて面白いんじゃないか*25cと考えた。その上で花弁のレリーフの幅や深さを今までの経験値から釉薬の溜まりと輝きが良く表現できるようにと考え開発したね。完成形とまではいかんかもしれんけど、これからの開発の方向性としてわかってきた感じだね。(*25abc.この面白さはやきもの独特の感覚で、釉薬は焼成中は溶けたガラスのようになり、基本的に重力に従い高いところから低い所に流れ、それによる濃淡で輝きや色合いの面白味が生まれる。ぎやまん陶の花弁のレリーフは単純な高低差に加え、花弁内の左右の深さの違いも濃淡に影響するため一層複雑になる。焼くことで生まれる濃淡の面白味は自然の持ち味で焼いてみないと判断が難しい。それを創意工夫で器に取り込むのもものづくりとしての醍醐味でもある。)

司会:開発はスムーズにすすむものですか?

伊藤社長:いや、形状の修正を何回もやっとるよ。原型*26aだけは一生ものだから原型師さんと何回も修正しとる。作る手順としては、まずお皿の内側の花弁のレリーフを彫り内側の釉薬の流れ方を確認する。それでOkなら外側にもレリーフを彫る。だめなら、本数変えたり、深さを変えたり、この楕円焼物皿も何回も形状修正*26bをやってた。だから「小兵は型屋泣かせ」って呼ばれるね(笑)。(*26ab.産業では基本的に石膏型を使い器を製造する。その最初に作るのが原型(げんけい)。原型は図面をもとに窯元毎で異なる焼成での変形傾向や収縮(10~15%)を考慮に入れて器そのものの形を石膏で制作する。複雑な形状ほど原型費用は高額となり、ぎやまん陶は複雑な部類となる。その上、花弁レリーフの本数変更は作り直しとなるため形状修正での費用負担も大きくなる。ぎやまん陶はそのリスクを負いながらそれを行ってでも最良の雰囲気を求めたものがぎやまん陶)

司会:じゃあ製品開発は、まず表現したい色があって、それに合わせて花弁のレリーフを調整するような流れですか?

伊藤社長:いや、まずは大きさかな。

高井社長:そんな感じですよね。まず道具としてのサイズ感というか大きさをデザインされて、そこからですよね。

司会:その大きさの中で、ぎやまん陶としてどう映えるかを大切に花弁のレリーフを構成するという事ですか?

伊藤社長:そんな感じやね。

『それぞれの窯元のうつわを手元に語るカネコ小兵伊藤社長(左)、作山窯高井社長(手前)、深山松崎社長(右)』

高井社長:長年一つのものを作り続けている味というか全てが器に出てますよね。だから、この器はまだまだロングライフでいつづけるだろうなと思う。そもそも、商社*27aからの企画でなくて、メーカー*27bが自社で作るものはそんなコロコロ変える必要もないでしょうしね。小兵はこれだ、深山はこれだ、作山はこれだ、というのがきちんと伝えられる。伝えられないとメーカーとしても残っていけないと思う。現実として、これだったら商社が売ってくれるかな買ってくれるかな?と商社に合わせたものを作らざるをえない現状はまだある。でも、すぐに全てが上手くいかなくても、メーカーであるならぎやまん陶のような作り手として大切にしていることが表現できる製品を作っていかないといけないと思う。*27ab.多治見市、土岐市、瑞浪市で構成される美濃焼生産地は現在でも国内の陶磁器生産の約60%を担う最大の生産地。その生産量を支える一つの特徴が分業制で、その最たるものが「メーカー」と「商社」による製造と販売の分業。且つては、製品の企画は販路を持つ商社が考え、メーカーは作る事に特化して商社から依頼された製品を対応する。輸出が好調だった時代やバブル期など分業が効率的であった時代もありましたが、分業制の一つの課題として自身で製品を考える必要の無いメーカーの企画能力の低下があります。)

伊藤社長:そして、その大切なことが製品としてあれば、それがフラッグとなり考え方が分かり易くなる。深山でも白磁に対するこだわり*28が伝わる。作山でもハマのこだわり*29から会社の根幹を表すようなものがある。そこから広げ伝えていく。自身が大切にしているものをきちんと製品として表現し伝えるから、それが安心感となり、最終的にブランドと呼ばれるものになるよね。作り手にとっては、ある意味ブランドとは目的ではなく、結果だと思う。(*28.深山の白磁へのこだわりは『深山編③素材の限界で焼き上げる白磁』参照)(*29.作山窯のハマへのこだわりは『作山窯編①ディティールから広がるものづくりへのこだわり』参照)(2021年4月23日掲載)

*「作り手として感じる、それぞれの窯元の凄味」カネコ小兵編は今回までとなり、これにて第二回座談会は全12回の最終回となります。ぎやまん陶とリンカという二つの代表作を作り手として根気よく試作しながら、使い手とのコミュニケーションの中でブラッシュアップし完成に近づけていく。ロングライフな製品を目指すというお話がありましたが、それが単なる企業としての目的ではなく、作り手だからこそ消費的ではない食器としての正しい有様を求め続けるものづくりを行いたいという伊藤社長の姿勢の象徴であることを感じられました。下記にそれぞれのリンクをまとめましたので、改めてご覧頂ければ幸いです。次回からは第三回座談会の内容となります。

  1. ぎやまん陶をぎやまん陶として保つために
  2. 窯元禁断の本物の飴釉
  3. ロングライフな器を目指したこだわり
  4. 作り手として大切なこと

〉〉〉第三回座談会『(仮)我が家の食卓』に続く*未掲載)


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