『作り手として感じる、それぞれの窯元の凄味』深山編③素材の限界で焼き上げる白磁。

『作り手として感じる、それぞれの窯元の凄味』深山編二つ目:ガバ鋳込み成形で形を整えるから続く


―作山窯とカネコ小兵から見る深山の凄味―(語り手:作山窯・高井社長、カネコ小兵・伊藤社長、受け手:深山・松崎社長)

『三つ目:素材の限界で焼き上げる白磁』

松崎社長:この成形が難しいガバ鋳込みで作った器を1340度*11高い温度で焼くもんで、より歪みやすい。(*11、深山の最も得意とする白磁を焼成する温度。白磁は還元焼成という方法で焼く。還元焼成とは、焼成の途中で窯の中を酸欠状態にして土の中にある鉄分などを還元反応をさせることで微かに青みがかった白磁状態に仕上がる*窯に火が入る瞬間の動画(音源入)はコチラから、窯内に上下左右のバーナーから炎が溢れ熱を対流させることで均一な焼き上がりとなります。

伊藤社長:さらに歪むよな。温度が高いと。1340度で焼くことになんかこだわりがあるの?

松崎社長:それは、現実的にはアンバランスな部分があって、1340度で焼くっていうところの良さはやっぱり磁器の白さ*12や、光があたった時の透ける感じ*13っていうのは間違いなくあるんですよ。あるんですけどそれと相反するところで、例えば、これ(1340度)で焼くと歪んで形状が保てない*14ので、本当はもう少し低い温度で焼きたいといった葛藤があるので難しいところです。なので本当は、この温度で製造しないといけない商品と、またそうでない商品を仕分けしたいんですけどね。(*12、13、深山の白磁に使う粘土はガラス質の多く調合したものを使用している。その土を1340度で焼くと土の中の不純物は焼失し、内側まで溶けてガラス化が進む。そうする事で高い白色度と、かすかに光を透す外観に仕上がる。同時に全体がきちんとガラス化する事で、硬く、汚れが付きにくく洗い落し易い機能的な素材にもなる。)(*14、ガラス質の多い粘土を高温で焼くことで*12.13のようなメリットもあるが、同時に焼いている間は溶けたような状態になる為、変形が生じやすくなる、どのようなやきものでも生じる課題だが、その変形の幅が大きいため、開発の際には変形し難い形や肉厚を注意して開発する必要が生じる。)

伊藤社長:前の話で、白さにこだわるって言っとったやん。その白さを出すには1340度なんでしょう?

松崎社長:そうですね。ただ、この土はそんなに焼きごし*15があるわけじゃないんですよ。だから実際には土のスペックを超えた焼成温度になっちゃってるんですよね。(*15、焼成による変化から形状を維持する抗力。やきものの土はざっくりというとガラス質と粘土分で構成されている。焼成時抗力は粘土分が担っているため、ガラス質の多い粘土を使う深山の場合は、反面、粘土分が少なく、焼成時の変形が発生し易い。但し焼きあがると、白く、硬く、衛生的な素材となる。)

伊藤社長:だからギリギリなんだろうね。技術を超えたギリギリなんじゃないのこれ。それでも形を保って歪んでないからすごいよな。

松崎社長:これは温度からいけば完全に土のスペックを超えてると思います。それでも形を保つのは開発するインハウスデザイナー*16は、それをいつも見てるわけですから、これくらいの形なら保つだろうなとかそういうのは感覚的にあって、その上で製品開発をしているからだと思います。(*16、現在3名のインハウスデザイナーで製品を開発している。いずれも企画や製図のみならず自身でも原型制作も行う事で、最終的に製品がどう仕上がるかを想定しながら開発を行う)

伊藤社長:例えば最初は不良ばっかとかそんな感じやった?

司会(開発担当):(sasasaシリーズの)不良の許容範囲は最初はちょっと緩かったですね。今は回転排泥*17って言って回しながら排泥する方法で製造していますが、当初は普通の排泥だったんです。ただ、それだと、胴の部分の肉厚のバランスが微妙に違うので歪み易くて・・・、なので、回転排泥がいいんじゃないかって。それこそ現場の中で変わっていきました。(*17、ガバ鋳込の際に石膏型から泥を排出する手法の一つ。専用の台で石膏型を回転させながら泥を排出する事で均一な肉厚に仕上がる。回転排泥が可能な形や大きさに制約がある)

『sasasaカップを手に取り語る作山窯の高井社長(左)と深山の松崎社長(右)』

高井社長:だからいいものができるんだね。別にさっきのうちの話*18も特別じゃないですよ。(*18、作山窯のものづくりは『作り手だからこそ感じる、それぞれの窯元の凄味。作山窯編①~④』にて)

伊藤社長:そっちはそっちで特別やけど、磁器の中でこれは特別やと思うよ。

松崎社長:なかなかガバ鋳込みで、カップを作る*19ことはあまりやらないから、一段とそう感じますね。(*19、ガバ鋳込みは産業の成形方法の中では最も手がかかる技法のため、皿や鉢、カップはもっと量産に向いた成形方法で生産されるケースが多い。Sasasaシリーズは白磁素材の特性を大切にするため、均一で繊細な成形が可能なガバ鋳込みで敢えてチャレンジした器)

伊藤社長:水ゴテ成形*20が多いからね。でも、そうするとこんなに薄くできんもんね。昔、エッグシェル*21っていう、この地域*22の薄作りの焼き物があったけどさ、この地域の土は粘り気があるから普通はコテでやるけどガバ鋳込みっていうのはあんまりないよね。(*20、成形方法の一種。詳しくは作山窯編③『水ゴテ成形による陶器としての形づくり』をご参照下さい)(*21、卵殻磁器と呼ばれ、明治時代には輸出用に多く生産された器。卵の殻ほど薄く作る事で光が透けた。)(*22、カネコ小兵さんのある土岐市下石地区。洋食器の磁器が主体であった深山のある瑞浪市とは異なり、和食器の生産が多かった土岐市では、粘土分を多く含んだ土が使用されるため粘り気が多く水ゴテでも薄いうつわが成形可能であった)

『素材自体をガラス化する事で生まれる透光性。日にあたると仄かに透けます』

松崎社長:深山では、あるインテリアショップのランプシェードを製造していますが、それは、もともと九州の有田の土で作ろうとされてたんですけど、透光性があまりない*23という問題があって、それで我々に話が来て、これ(sasasa)と同じガバ鋳込み成形の回転排泥でやってます。透光性が全然違うので。そういうのは深山の還元で1340度で焼くっていう技術と、ガラス質の多い素材が活きてきます。(*23、美濃と有田では同じ磁器でも組成が異なるため性質も異なる。有田地区の磁器は陶石をベースとしている。陶石とはとても優秀な原料で、原料の中の粘土分の白色度が高いため不純物を除けばそのまま白磁を作る事ができるという素材。美濃地区の白磁がガラス質と粘土分を調合し、ガラス質の特性で仕上げるのに対して、有田地区では陶石に含まれる高い白色度の粘土分により白磁を仕上げるため、白磁でも形状の変形が少なく難易度の高い形づくりが可能なる、半面、ガラス質は少ないため有田地区の白磁は透光性は低い。)

伊藤社長:天草陶石を原料に*24 作ったランプシェードが透光性がなかったんだよね。蛙目粘土*25のような、この地域の土だったら透光性もあるし、温度は高温で焼けるからそういう感じになったんやね。(*24、有田地区の原料。他の原料を加えなくても不純物だけ取り除けば白磁の器を作る事ができる単味の原料。世界的にも貴重。)(*25、「がいろめねんど」と読む。美濃地区で良く算出された粘土。陶器としては単味で生産可能であり、且つ、同じく美濃地区で算出される釜戸長石などのガラス質を含んだ原料と調合する事で磁器の素材となる。美濃地区の特徴の一つが、この原料のブレンド力。原料メーカーさんが窯元の要望に合わせて調合し粘土を生み出すことで、美濃地区では和食器から洋食器、メーカーものから作家もの、高級品からリーズナブルなものまで多様な器を生み出し、日本国内の約60%の器を製造する。)

松崎社長:向こうのやつ(有田の土で成形したもの)も見ましたけど、形はシャキっとしてました。すごいなと思いましたけど、光が透けるという機能がどうしてもランプシェードには足りなかったんですね。

伊藤社長:土の持ち味を活かしとるという感じやね。

松崎社長:だからさっきのはなしじゃないですけど仕分けはしたいでんすよね。素材の特性は活きるようにしたいし、器の形も維持したいので・・・

(2021年3月12日掲載)

〉〉〉(深山その4「職人が支える白磁の仕上がり」に続く)


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