(第九話)『ものづくりの現場から~素材について~』 他産地、他素材のものづくりに触れて-日進木工(高山市)‐

『他産地、他素材のものづくりに触れて-日進木工(高山市)‐』(第八話)ものづくりの規模と幅から続く


(第九話)『ものづくりの現場から~素材について~』(語り手:株式会社日進木工 北村社長 聞き手:カネコ小兵 伊藤社長、作山窯 高井社長、深山 松崎社長 司会:深山 柴田)

日進木工 北村社長(以降、日進木工):工場の製造工程をご覧頂く前に見て頂きたいのがこの材木置き場です。日進木工では何より【木材の乾燥】をきちんと行う事が昔からのポリシーです。ウェブサイトでも『日進木工の四つの技術』の一つとしてご説明しています。

●『乾燥』工程。自然に成しえてしまう工程だけに丁寧な管理が必要となる。

 カネコ小兵 伊藤社長(以降、カネコ小兵):まずは乾燥からですか・・・。飛騨地域*1は雪もかなり降ると思うのですが、そうした気候の影響というか対策といった要素もあるんですか?

日進木工:家具というか木工においては、素材の扱いが大切なのはどの地域でも基本的に変わりは無いと思います。ただ、飛騨地域は年間を通して湿度があまり高くないので水分の抜けは良いと言われてます。たしかに雪は高山市内でも50㎝くらい積もるので木材置場の土台は少し高くしていますが、乾燥については、実は冬の方が水分が抜け易い*2んです。空気の中の全体的な水分量は少ないので。

●土台が高くなっている材木置き場

 作山窯 高井社長(以降、作山窯):市内でも積もるんですね。どれくらいの期間を乾燥させるんですか?

日進木工:切り出した材木の厚みで多少変わりますが、厚いもので1年半、薄いもので1年くらいですね。木材については細かな規格を設定しています。例えば『厚み』だと、この看板に「36」とありますが厚みが36mmという意味で、他に「45」や「28」など製品毎の規格があります。

●作業場の壁面には木材の基準が記載されたパネルが・・・

深山 松崎社長(以降、深山):この細い木は何ですか?

日進木工:これは桟(さん)積みといって木材の間に渡して隙間を空けながら積み上がる時に使う木材です。そして、この桟積みされている段階で、どう使うかは既に決まっているんです。「天板にしよう」とか「椅子用にしよう」とかを「木目の綺麗さ」や「柾目」「板目」*3の違いで判断して・・・。

●『木材の選定と適材適所』。丸太の中にある家具のパーツを想い描き切り出す。材料との濃密な関係から紡ぎ出される工程。

深山:丸太の状態を見て、作る家具を想定するというのは、私たちでは全く想像できなくて、凄いとしか言えないですね。

日進木工:そうですね。この『木取り』も日進木工の四つの技術の一つですが、担当はこの材木置き場で一つ一つの丸太を視ながら『木取り』を行っています。 それでは、これら材料で実際に家具を作っている工場内に移動しますね。足元に気を付けながらお入り下さい。2022年9月30日掲載)⇒第六回座談会「⑩ものづくりの現場から~技術について~」に続く・・・*10月7日掲載予定(毎週金曜掲載)

●北村社長に導かれいよいよ工場内に入る。

 


●脚注:*1.日進木工のある高山市はこの飛騨地域の中心的な存在。岐阜県は飛騨地域と美濃地域に分かれる。飛騨地域は飛騨山脈や飛騨高地など山地や高地が多く、気候は中央高地式気候となり冬季は積雪が多く厳寒となる。*2.冬は寒いため木材の乾燥を進めるには一見不向きに見える。しかし、実は冬の方が水分が抜け易く乾燥し易いとのこと。木材が乾燥するためには内部の水分を無くす必要がある。水分を無くす方法は【熱をかけて蒸発させる】か、【より吸水力のある何かに水分を引き取ってもらう】など。冬は気温が低いため空気中の水分は気体の状態を保つことが難しく水滴や結露など液体に変化し易い。そうして空気の中にある水分は液体として移動してしまうため、空気中の水分は減少する。この水分が少ない空気が材木に辿り着くと、材木の中の水分を引き出して使うため、結果として材木の中の水分が減り乾燥が進行するとの事。*3.「柾目(まさめ)」「板目(いため)」と読む。材木の木目の表情の違いを表した言葉。板目の方がよく目にする曲線が混じった木目の模様で、柾目は木目が平行に並んだ状態。この違いは丸太のカット方法により変わるが、柾目で板を取ろうとする場合は端材が出てしまい効率的ではない。そのため一般的には柾目の方が高価となる。


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