(第4話)『美濃焼の特徴とは?』‐美濃焼について思うこと‐

『美濃焼について思うこと』*第3話「それぞれが思う今の美濃焼は?後編」から続く


―(第4話)美濃焼の特徴とは?(語り手:カネコ小兵 伊藤社長、作山窯 高井社長、深山 松崎社長)

司会:參窯をスタートする時にこの活動は【美濃焼*1にぶら下がらず行いたい】というお話がありました。美濃焼の名前で自分たちの存在を表すのではなく、自分たちの活動が美濃焼の大枠を提示するのだというお話は作り手としての矜持が伺えたと思っています。

 そして、改めて美濃焼のものづくりとは何だろうという疑問も湧きあがりました。その時にどうしても引っかかるのが業界作成の産地紹介本にまで掲載されている(笑)「美濃焼は特徴が無いのが特徴」という言葉です。美濃焼を象徴する言葉として、よく耳にするこの言葉について特徴的なものづくりを行われる三つの窯元の皆さんはどう思われますか?

●やきものハンドブック(日本陶磁器工業協同組合連合会制作)より

カネコ小兵 伊藤社長(以降 カネコ小兵):そもそもこの言葉が使われ始めたのは、生産量がピークだった昭和40~50年頃に1200軒あった窯元が現在300軒くらいまで減ったわけだけど、その停滞期の商社による販売促進活動で耳にするようになったと思う。事実として、それ以前も現在も美濃焼は陶器でも磁器でも和食器でも洋食器でも何でも作れる*2国内で最も「量」も「価格」も「質」も対応できていた多様性のある地域だからね。それが美濃焼の生産地のイメージとして伝えやすかったんだろうね。和食でも洋食でもなんでも料理して提供する町の定食屋さんのようなスタイルだよね。それに当時の窯元は商社に言われたものだけを作る生産専業だったので、個々の窯元からブランドイメージとなる特徴を伝える方法を持っていなかったからね。結果として美濃地域から生まれてくる多様な器をみれば、詳細を知らない人が見て“何でも作る”=“特徴が無い”が浸透するのは仕方がない環境だと思うよ。

●參窯の三つの窯元だけでも多様性を感じられる美濃焼のうつわ

カネコ小兵:でも実際には、当時であってもカネコ小兵はこれしかできないとか、この窯元はこれしかできないとか、同じ産地内であっても窯元それぞれに特徴があるから、美濃焼として全体を捉えるか、窯元それぞれとして捉えるかによって特徴があるとかないとかは変わりますよね。それに、伝統的に産地の特徴が明確で固定化している地域は、産地としてブランドと認識されやすいけど、その明確な特徴ゆえに、ものづくりの制約が強すぎて停滞してしまうケースもあるからね。さっきの定食屋さんのたとえで言うなら、そうした産地はフランス料理店だから日本料理を出すことはできないみたいな感じでね。だから美濃焼全体として特徴が無いと言われることは、それはそれで良いと思ってます。

●全体としての無個性と、窯元毎での個性を語るお二人

作山窯 高井社長:そうですね、そう呼ばれた過去は変えられないし、悪くも良くもその時はそれで良かった訳だからね。この參窯は未来を作るための集まりだから、これは過去の例として理解しておけば良いと思うよ。

カネコ小兵:それに産地として特徴を伝えづらいからこそ、参窯とか各々の窯元が自分たちで認知を上げなければならないと気づき活動する訳だからね。だから産地としての認識はこれでいいんじゃないかな。今までだって、たとえ産地として特徴が無いと言われたからと言って、器が売れなかったかというと、そうじゃない売れたでしょ?自信をもって『定食屋やってますよ(笑)』でいいと思うんですよね。2021年10月22日掲載)⇒第四回座談会「(第5話)では美濃の地域としての特徴は?(仮)」に続く・・・*次回10月29日掲載予定(毎週金曜掲載)


●脚注:*1.改めてですが美濃焼は岐阜県東部の多治見市、土岐市、瑞浪市の三つの市で生み出されるやきもの。その窯元数や生産量はピーク時から比較すると4分の1以下とだが、現在でも日本国内の陶磁器生産の50%近くを製造し工場組合に登録される窯元数も300社弱存在し、加えて2名の人間国宝をはじめ伝統系、クラフト系、オブジェ系など多様な作家も存在する日本最大の焼き物生産地。 *2.「陶器」も「磁器」も主成分は粘土、長石、硅石の三つの原料で構成される。異なるのはその比率。陶器は粘土分が多く粒子の粗いざらざらした質感、磁器は長石や硅石というガラス質の成分が多く焼きあがるとツルツルとした質感となる。「和食器」と「洋食器」はそれぞれ元となる食文化が異なる事から価値観も異なる。そのため製造方法も異なるため結果として作る地域も異なる。土岐市では和食器の製造が多く、瑞浪市では洋食器の製造が多い。この素材や技法の多様性が美濃焼の器づくりの幅広さにつながる。


〉〉〉「三窯行えば、必ず我が師あり」一覧に戻る

■過去の座談会記事一覧

〉〉〉第三回座談会『作り手の大切な器、我が家の食卓』はこちらから

〉〉〉第二回座談会『作り手として感じる、それぞれの窯元の凄味』はこちらから

〉〉〉第一回座談会『參窯のはじまり』はこちらから


〉〉〉■ご意見、ご感想、お問合せはコチラから


・・・・・各窯元ウェブサイト・・・・・

參窯その1:カネコ小兵製陶所(岐阜県土岐市下石町)https://www.ko-hyo.com/

參窯その2:作山窯(岐阜県土岐市駄知町)http://www.sakuzan.co.jp/

參窯その3:深山(岐阜県瑞浪市稲津町)http://www.miyama-web.co.jp/


・・・・・參窯ミノウエバナシ contents・・・・・

●ブログ「三窯行えば、必ず我が師あり」

●ブログ「うつわ、やきもの相談所」

●作り手に聞いてみたかったことがある》》》 ご質問はコチラへ

●オンラインストア「outstanding products store」

 ●イベント案内「歓迎/出張ミノウエバナシ」

産地でのファクトリーツアーや消費地でのワークショップなど、リアルなイベントのご紹介です。

●コラム「ノグチサンのミノウエバナシ」

●參窯(さんかま)へのお問い合わせは 》》》 こちらへ



 

 

関連記事

PAGE TOP