(第3話)『深山 松崎社長が思う今の美濃焼』‐美濃焼について思うこと‐

『美濃焼について思うこと』*第2話「それぞれが思う今の美濃焼は?中編」から続く


―(第3話)それぞれが思う今の美濃焼は?後編(語り手:深山 松崎社長)

‐深山 松崎社長が思う今の美濃焼‐

●今の美濃焼への想いを語る深山の松崎社長

深山 松崎社長(以降 深山):美濃焼が好調であったピークの時期を知る原料メーカーさんや釉薬屋さんの番頭さん*1の話を聞くと、当時の原料の使用量は今とは比べ物にならない量を使っていたと聞きます。だからこそ海外の原料を買うことができました。しかし生産量の低下に伴って原料の使用量が減少すると、高コストになっても仕方が無いか、若しくは、原料の輸入自体が難しくなっていると聞きます。原料の確保は、全体の生産量の話なので自らの采配でどうにかする事が出来ない。今の美濃焼は難しい時期だと思う事もあります。

●美濃焼の生産量のピークである昭和30~40年代の量産工場の姿。自動成型機を使い大量のうつわを生み出す。

深山:私たち深山は1977年に創業しました。これは先ほどの美濃焼の生産量のピークで言うと終盤戦の時期です。この時期となると生産地での器づくりの技術は成熟しており、その技術を先人たちから受け継ぐことが出来たためスムーズに創業できたと思っています。そうした点はとても感謝しています。ただ、ものすごくよく売れたという時代を経験してみたかったなと思う事はあります(笑)

 過去を考えるとそう思う事はありますが、今には今の良さがあります。例えば同じ食器を10,000個*2も作っていたその時代は、きっと数が多すぎて、誰が買ってどう使われているかイメージする事が全くできないし、誰が作っているかも伝えられなかった。しかしながら現代は生産量が減った分、追いかけることができて、どこで売られているかも分かるし、だからどんな使い手が選んでくれているという事が想像できるようになった。その事は嬉しいし、生み出したものの行く先を知る事ができるのはほっとしますね。

●作る事が目的では無く、それが道具として伝わり使われることを想像して器を生み出す!

深山:我々、參窯の三つの窯元は生産量が重視されていた時代では小さな窯元だったと思います。その時代の窯元の役割は商社の依頼を受け、出来るだけたくさんの数量を出荷するため1日8時間ずっと製造のみをすることだった。ありていに言えば言われた通り作っていればよかった。しかし、現在はそうではなくなったと思います。売られる場所、使う人が想像できる以上、そこでより良く使って頂けるために、単に作るだけでなく、使う事、伝える事などものづくりの前後も作り手である窯元は考えないといけないと考えます。1日8時間の稼働時間の中で、例え生産量は減ったとしても考えるための時間を生み出さないといけない。この三つの窯元は目指す器の形は異なりますが、その根底の想いは共通しているそういう3社だと思うんですよね。そして、それがこれからの美濃焼の生きる道の一つなのかと思います。そんな參窯の在り方に共感してくれる窯元がいたら嬉しいですね(笑)

●イゾラ パレットプレート使う事、伝わる事を大切に開発し撮影されたうつわ。*この器の詳しくはこちらから

司会:この座談会の感想を他の窯元や関係者から聞きます。すごくしっかり読んでくれていて、忘れているようなことの感想を言って下さる方もいらっしゃっていて、興味は持ってもらえているのだなと感じます。松崎社長、皆さまありがとうございました。それでは座談会を始めたいと思いますが、先ずどうしても私が伺いたいのは美濃焼の説明としてよく言われる『美濃焼は特徴が無いのが特徴』という言葉について。美濃焼を象徴するようなこの言葉ですが、明らかに特徴的な器を作る三つの窯元がこの言葉をどう感じているのか伺いたいです。2021年10月15日掲載)⇒第四回座談会「(第四話)特徴が無いのが特徴は本当?(仮)」に続く・・・*次回10月22日掲載予定(毎週金曜掲載)


●脚注:*1.大量生産の最盛期、窯元の社長は「大将」とよばれていた。それは経営者と言うより象徴としての存在。その大将のもと実務面で支えたものを『番頭』と呼ばれていた。 *2.10,000個は決して大げさな数値ではない。現代でも美濃地区の大量生産メーカーでは一日当たり数万~10万個程度を生産するメーカーは存在する。 


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