『作り手の大切な器、我が家の食卓』*參窯スタッフのY.IさんとR.Iさん編 第二話から続く
―(番外編 第二話)參窯スタッフY.IさんとR.Iさんの大切な器、我が家の食卓―(語り手:スタッフY.Iさん、R.Iさん 聞き手:カネコ小兵・伊藤社長、作山窯・高井社長、深山・松崎社長、野口品物準備室・野口さん、司会:深山・柴田)
【叔父からの思い出のうつわ(後編)】
作山窯 高井社長(以下 作山窯):絵付けの話に戻るけど、この草花模様はサビと古染*1の二つの顔料を使って描いてありますが、この絵付けは今の職人さんにはできないと思いますね。今と昔の違いがここからみてとれますね。
作山窯 :輸出が盛んで同じ絵柄を何度も描く事が出来たという時代背景はあるとしても、職人として仕事に対する考え方とかものづくりの想いが違ってましたからね。産業での手描きが決して特別なものでは無くて、それを量産のスピードで、そして良いやきものを作らなければならないという意識を持っていた当時の職人だったらこの大きさのうつわなら2分あれば描けちゃうんじゃないかな。加えると、器全体のデザインも上手く製造のこと考えられてますよね、器自体に草の部分が彫刻で入ってるから、それが絵付けの時の目印になって描くときに場所を迷わないという効果がある。もちろん彫刻による凹凸がある事で顔料や釉薬の濃淡も生まれてやきものとしても雰囲気良くなってますしね。
カネコ小兵 伊藤社長(以下 カネコ小兵):釉薬でもこういう色作れば雰囲気が出てくるよね。呉須が珍しいな。
作山窯 :顔料について話すと2種類を混ぜ合わせていると言いましたが、鉄分の多いサビは伝統的な顔料でなじみ深い色合いが出るけど、それだけだと金気(かなけ)が出てしまうので、それを防いで、かつ雰囲気をより良くするためにこちらも伝統的な顔料の古染と呼ばれる呉須を混ぜてると思います。更にここにお茶*2を加えます。飲むお茶ですね。
スタッフY.Iさん:お茶はどういう効果がでるんですか?あとこの裏面のロゴも手描きですか?
作山窯:お茶を加えると色が落ち着いて定着するんです。定着材みたいなものですね。この裏のロゴは手描きじゃないね。この文字の真ん中の濃淡があるところが割れてるというか境目の様なものがあるでしょう。多分ゴム印*3で押してるんじゃないかな。
カネコ小兵:こういう雰囲気のものは改めて今あっても良いよね。素材的に深山さん作ってたら面白いんじゃない?
深山 松崎社長(以下 深山):来ましたね(笑)。面白いなって思いますけど、今までのお話伺うと現代の工場で作り出せる雰囲気では無いのかなって考えてしまいますね。似たようなものは出来ても、当時の職人の手から生まれる何かが足りないような。
作山窯:今度までの宿題ですね(笑)。
スタッフY.Iさん:これすごく好きな器で使ってて楽しかったですが、今回、そのおじさんの倉庫からもらってきた器の成り立ちが聞けたのが嬉しいです。ありがとうございます。
【うつわか?食器か?】
司会:続いて、同じく參窯スタッフのR.Iさんの持ってきた器です。ぐっと現代的ですね。
スタッフR.Iさん:そうですね作家さんのものが多いですね…(2021年7月30日掲載)⇒番外編『作り手の大切な器、我が家の食卓』參窯スタッフY.IさんとR.Iさんの場合(第三話・最終)に続く・・・*8月6日掲載予定(毎週金曜掲載)
●脚注:*1.サビも古染も絵柄を描くための顔料。サビは鉄分を主体とし焼き方にもよるが錆びた鉄の様な茶色に発色する。古染は呉須(ごす)と呼ばれる顔料の別名で主成分がコバルトであり深みのある藍色に発色する。いずれも古くから使われている伝統的なやきものの色合いで東西を問わず器との、ひいては食との相性が良くなじみ深い色合い。 *2.顔料の定着を良くするために現代はアラビアゴムなどを使う。やきものづくりにおいては一般的なその方法も、はじめは顔料だけでは不具合が生じるという難点に対して職人が試行錯誤しお茶を使う事で解消されたその経験則から培ってきたもの。表面的な技術だけでなく、そのものづくりに対する創意工夫を受け継ぎブラッシュアップするものこそが職人ではないか。 *3.現代のシールの様な転写技法が定着する以前はゴム印による絵付けは一般的であった。ゴム印も転写も元々はやきものの技術ではなく、印刷技術の発展をやきものに転用してきた先人の試みがその発端にはある。參窯オンラインストアで取扱うsasasaシリーズの銅版転写技法もそうした先人の創意工夫により誕生した。
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