(第十二話)『想いを製品で表わす』 他産地、他素材のものづくりに触れて-日進木工(高山市)‐

『他産地、他素材のものづくりに触れて-日進木工(高山市)‐』(第十一話)ものづくりの現場から~製品について~から続く


(第十二話)『想いを製品で表わす』(語り手:株式会社日進木工 北村社長 聞き手:カネコ小兵 伊藤社長、作山窯 高井社長、深山 松崎社長 司会:深山 柴田)

司会:日進木工さんの三つのストーリーの内、「FROM HIDA第六話参照」と「軽く強く第十一話参照」については伺いましたが、残りの一つに「シンプルでモダン」を選択されたのは何故ですか?

日進木工 北村社長(以降、日進木工):飛騨の家具の場合には民芸家具*1をイメージされる方が多いんです。事実、現在でもそうしたテイストの家具メーカーもあります。ですが日進木工では1990年代、三十年くらい前から現在に通じるモダンというかナチュラルなスタイルの家具作りに取り組んできました。それは、祖父が1960年代にドイツやデンマークを視察し目にしたライフスタイルに溶け込んだ家具*2。これからの日本の住宅にもこうした家具が調和するのではと感じたことがスタートです。それ以降に生み出した北欧感のある家具の持つ雰囲気を総じて「シンプル&モダン」と表現しストーリーに組込みました。

●シンプルでモダン。その製品に潜んだ暮らしへの想い。

深山 松崎社長(以降、深山):飛騨の家具のイメージと異なるものづくりをされたんですね。でも、そうすると「なぜ飛騨の産地でこんなシンプルなものを・・・」と指摘されませんでしたか?

日進木工:そうですね。あくまで当時の話ですが民芸家具が好きな人からは「これ(こんなにシンプルなもの)でこんなに高いの?」と言われる事もあったみたいです。比較すると日進木工の家具は見た目の印象が華奢というか細いので・・・。なので、「軽くても丈夫だよ」とか。「毎日動かすものだから、軽いってことも機能の一つです」とご説明してきました。伝え方も大事だと思いますね。

司会:食器もですが、家具にも流行り廃りがあると思うのですが、ものづくりのスタイルを固定されたときに、そうした事への対応はどうお考えですか?

日進木工:家具にもカラーやスタイルの流行は確かにあります。ですが、日進木工は時代に流されないタイムレスなものを作っていきたいと考えます。ロングセラーというか飽きられないものを作るのが大事だなと思うので「軽く強く」や「シンプルでモダン」のようなスタイルに関わるストーリーを大切にします。その上で、現代の暮らしの中で選んで頂けるような製品開発を目指します。

●製品に潜む想いを語る北村社長(右)に耳を傾ける松崎社長(左)

カネコ小兵 伊藤社長(以降、カネコ小兵):そうした普遍性と時代性のバランスはどうやってるんですか?

日進木工:日進木工のデザイン担当はインハウスも外部デザイナーも比較的男性が多いです。ただ現時点で言えば、家具は家庭にいる時間の多い女性が決定するケースが多いので、女性が共感できる要素は重視しています。その為、椅子の座面などファブリックの選定は全て女性の担当者が行います。そうする事で普遍的ながらも、時代時代の暮らしと寄り添いながらお使い頂けたらと願っています。

●參窯豆皿揃え:直径10㎝程度の豆皿に三つの窯元の個性が表れる

日進木工 北村社長:改めてですが、先ほど拝見した參窯の豆皿セット。美濃焼のイメージ*3に囚われずそれぞれに特徴がありますよね。例えば、このぎやまん陶は伊藤社長が発案されたものですか?

カネコ小兵:それぞれの窯元の特徴に伴って製品も全然違うから幅があって面白いセットですよね(笑)。ぎやまん陶は私が考えましたが、それは決して積極的な理由ばかりでもなくて、うちにはインハウスのデザイナーがいる訳でも無いし、やきものは外部のデザイナーに意図を伝えるのは難しいと思ったから自分で考えていくしかなくて・・・。でも、作るの自体は原型師とか生産に近い人たちのノウハウを受けながらという側面もありますよ。自分の考えがスタート地点なのは作山窯の高井社長も同じですよね。彼の場合は、器だけでなく使い手の様子を見るらしい。そういう人がどんな服を着て、どんなバッグを持っているか?という事から発想を得るんだよね。だから作山窯の製品は特に色にこだわりがあると思うんだ。

作山窯 高井社長:間違ってはいないけど、道行く人をジロジロ見ているような誤解を受けそうだな(笑)2022年11月18日掲載)⇒第六回座談会「最終話⑬(仮)これからのものづくりについて」に続く・・・*11月25日掲載予定(毎週金曜掲載)


●脚注:*1.民芸家具は、柳壮悦らによる民芸運動の影響をうけ1950年頃から長野県松本市で制作が始まった。そのものづくりは和家具の技術をもって、ウィンザーチェアなどを手本に洋式の生活スタイルに適した家具を製作を始めた事が端緒となる。当時の生活様式に調和したその家具は日常に調和し、民芸家具は一つの形式となった。その民芸家具と民芸“調”家具の違いは、民芸家具は「和の技術と洋の暮らし」という生活がベースにあるが、民芸調家具は暮らしへの理解をせずに、市場に在る民芸家具が持つ洋家具の装飾的なエッセンスを組み込んだだけのもの。

 *2.“シンプルでモダン”という日進木工の北欧的家具作りは民芸家具の端緒と同様に生活スタイルとの調和を大切に生み出されたものと思われる。「民芸家具」と「北欧的家具」は外観は異なるが暮らしを豊かにするという方向は同じくある。 

 *3.美濃焼には余り固定的なイメージは無いが、その中でも最も印象が強いのは「志野(しの)」や「織部(おりべ)」といった桃山から江戸初期に古田織部の手にかかり生み出された形式では無いか?その印象から和食器や陶器といった印象が強いが、美濃焼の実情としては和食器も洋食器も生み出され、陶器も磁器も素材として使われる。美濃焼の陶磁器における地域的な特性は、多様な原料(土)が産出されたことを原因として、スタイルや技法に縛られず、それぞれの作り手が想い描くものづくりが可能な多様性。である。參窯の活動では、そうした美濃焼の多様性から陶磁器の幅の広さや面白さを伝える機会になればと願う。


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