『松崎家の食卓のうつわ5選②』深山 松崎社長の場合(第二話)‐作り手の大切な器、我が家の食卓‐

『作り手の大切な器、我が家の食卓』深山の松崎社長第一話から続く 


―(第二話)深山の松崎社長の大切な器、我が家の食卓(語り手:深山・松崎社長 聞き手:作山窯・高井社長、カネコ小兵・伊藤社長、野口品物準備室・野口さん、司会:深山・柴田)

【松崎家の食卓のうつわ5選の続き】

『④ドイツで出会った窯変の皿』

深山 松崎社長(以下、深山)ご紹介したい器はあと二つあります。まずはこの鉄釉*1なのかな?のお皿(④)。このお皿も③の取っ手のうつわと一緒で、フランクフルト(ドイツ)の展示会の時に出会ったドイツの工房の器です。その展示会の時にいろいろお話させて頂いていたんですが、実は日本でも販売されていたそうで、そこで。

野口さん(野口品物準備室):そうですね100年近く前に設立されたドイツでもかなり古くからある工房の一つで、丁度いま東京のギャラリーでも販売されてるんですけど、手仕事が伝わるこの風合いや使い易さから実は日本でも人気の工房ですよ。

深山:そうなんですね。展示会の時、割と近くにブースがあって興味があったので眺めてたんです。この工房の器は窯変のものばかりなんですけど、この鉄釉に限らずほんとうに多彩で言葉では表しがたい良い雰囲気なんです。重量感はあるんですけど重いというより安心感があって、そしてきちんと作られているから盛り付け面はしっかり平らなので料理が盛り付け使い易いんですよね。

『フラットな形なので料理が盛りつけ易くて映えるとのこと』

カネコ小兵 伊藤社長(以下、カネコ小兵):確かに、結構盛り付け面が広いのにあんまり落ちとらん*2な。

司会:これは轆轤を使った手作りですかね?

深山:そう手作り。実はそのあとも、この工房の器は機会があるたびに買ってるんです。だから家の食器棚には結構増えてきてるんですけど、今回持ってきた鉄釉のお皿に限らず、まずは色合いも含めて窯変*3の良さというか面白さがあって見た目が好みなうえに、さっきの盛り付け面がフラットだったりする使い勝手のいいところも両面があって良いですね。

『⑤梅花皮(かいらぎ)の器を見る野口さん』

深山:最後は、野口さんが持ってる貫入?梅花皮(かいらぎ)*4?の小皿(⑤)。これは2年くらい前に瀬戸市*5の問屋さんが運営してる雑貨屋さんで買ったものですね。梅花皮のような墨貫入のようなこういうやきものでしか表現できない雰囲気でありながら日常で使える器は良いなって思います。ここの問屋さんでは瀬戸市に限らず美濃焼の地域からも幅広いやきものを取り扱われていて、こうした縮図のような品ぞろえは問屋さんなりの羨ましさは感じますね。例えば深山ではどう逆立ちしてもこの器はできませんから。

『お皿表面の細かいひび割れの様な状態を梅花皮(かいらぎ)と呼ぶ』

深山:この器は食卓で本当に様になるんですよね。こうしたものを作る良い窯元がメーカーさんがまだまだこの美濃地域にはいるんだなって思いますね。嬉しいし、羨ましくなりますね。

カネコ小兵:これは梅花皮(かいらぎ)だと思うよ。作山窯みたいに土から考えれば出来ないことはないんじゃない (笑)。梅花皮(かいらぎ)は俺も昔やりたかったけど結局できなかったんだ。梅花皮と墨貫入は見た目は少し似てるけど、墨貫入は生地(土)と釉薬の収縮率*6を意識的に少しだけ異ならせる事で、釉薬のガラス層の表面だけに貫入(ヒビ)が入る様に焼いて、そのあと墨に浸してヒビに染み込ませて汚れが入る事を抑える技法で、梅花皮(かいらぎ)とはだいぶ作り方が違う。

野口さん:墨貫入と梅花皮は違うんですね。

カネコ小兵:違うね。貫入はヒビに入れる色によって「紅貫」とか「墨貫」と呼ばれる。陶器が相性良いけど磁器素材でも可能。このヒビは焼いたあと冷めている時に現れるから、窯から出して置いておくと、釉薬の表面にヒビが入るに「チカチカチカ」って音がするよ。それが貫入になる訳だけで、墨貫入は、貫入(ヒビ)が入った器を墨に浸すとヒビに墨が入ってヒビ割れの線が強調される。墨使うから墨貫入。それと比べると、梅花皮は、貫入のように釉薬の表面がひび割れるというより、釉薬が縮んでちぎれて小さな釉薬のかたまりがいくつも器の表面にくっついている感じ。ヒビに色がついているように見えるのは、小さなかたまりの隙間から下の素材の土の色が見えてくるから。だから表面に凸凹感があるし、そもそも陶器のような多少の収縮性のある素材じゃないと器自体が割れてしまう。見た目からだと分かりづらいけど、出来上がる過程は大きく違うね。でも見た目の雰囲気だけだったら深山の銅板転写の技術で表面をぼこぼこにしてできるんじゃない(笑)

『梅花皮(かいらぎ)については、この後、作山窯の高井社長の時に更に話題に!こうご期待。』

深山:いえいえ、これは自分で欲しいだけだから、無理して作らずにお店に行って好きなうつわ買います(笑)。(続く…2021年5月21日掲載)⇒『作り手の大切な器、我が家の食卓』深山 松崎社長の場合(最終話)5月28日掲載*毎週金曜掲載


●脚注:*1.酸化鉄を使って発色する釉薬。酸化鉄は飴釉や黄瀬戸釉、青磁釉にも使用されており、広義ではこれらも鉄釉となる。今回の器は1955年に人間国宝となった石黒宗麿などが手掛けた柿釉の風合いが近い。 *2.やきものは焼く途中で一度原料が溶け、不純物や空気を除いて冷却時に収縮しながら固くなり器となる。その溶けている時に盛り付け面が広いと下に落ちてしまうケースがある。その点を、成形の工夫や厚みの調整で対処しなければフラットな盛り付け面は維持できない。   *3.窯で変わると書いて『窯変(ようへん)』と読む。焼く事で現れるやきもの独特の風合いだが、釉薬の厚みの違いや窯の中の炎が当たる位置の違いなどで個体差が生じる。  *4.梅花皮とかいて『かいらぎ』と読む。朝鮮半島の李朝時代の井戸茶碗の高台付近にみられた釉薬の縮れがそのはじまり。日本では萩焼でつくられる茶碗で良く見られる。  *5.愛知県瀬戸市はやきものの通称である『せともの』の語源となった地域。いにしえからの産地「六古窯」の一つにも数えられた。窯元もその器を取り扱う問屋も数多く存在する。   *6.やきものは焼成時に収縮し小さくなりますが、どの程度小さくなるかはその原料の特性によります。基本的に生地の土と釉薬の収縮は同じでないと不良が発生し易いため、念頭にいれ制作するが、この収縮率を微調整して、安全な範囲内でヒビや縮れを生み出して貫入や梅花皮といったやきものらしい表現を生み出す。


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