(第十三話・最終話)『事業継承と技術継承』 他産地、他素材のものづくりに触れて-日進木工(高山市)‐

『他産地、他素材のものづくりに触れて-日進木工(高山市)‐』(第十二話)想いを製品で表わすから続く


(第十三話)『事業継承と技術継承』(語り手:株式会社日進木工 北村社長 聞き手:カネコ小兵 伊藤社長、作山窯 高井社長、深山 松崎社長 司会:深山 柴田)

日進木工 北村社長(以降、日進木工):工場とショールームを一通りご覧頂きましたので、ひとまずカフェに戻って深山さんの器でコーヒーを飲みながらざっくばらんにお話しましょう。

●カフェでお使い頂いている深山の器。bicoコーヒーカップ&ソーサー(カラメルブラウン)

深山 松崎社長(以降、深山):弊社の器お使い頂いてありがとうございます。家具の質感ともあってますね(笑)。見学させて頂いて、何より感じたのは工場やショールームのスタッフの方々に若い方が多い印象でした。実際はどうですか?

日進木工:そうですね、ありがたい事に、ものづくりをしたいと入社してくれる子が多くて製造部門は人材という点では困ってないんです。これには2つ理由があって、一つは、地元の「高山工業高校」にインテリア建築科という地域に根差した学部があることが大きいです。地元の高校生を採用する事が大切だと思っていて、毎年必ず2人ずつ採ってます。

●高山工業高校。ウェブサイトURL https://school.gifu-net.ed.jp/wordpress/takayama-ths/

日進木工:もう一つは「木工芸術スクール」という県立の職業訓練校として家具づくりに特化した学校があるので、そちらの卒業生にも毎年1~2人来てもらっています。この学校はほとんど地元の人はいないみたいです。うちの社員の内37%は県外の出身者です。そういう若い方が来てくれるというのはすごくありがたいことですね。あとの課題は継続性です。若い子たちが独立したり転職したり、3割くらいは数年以内に退職しますね。あと営業職とか事務職が募集をかけても来ないです。そっちは苦労してますね。

●岐阜県立木工芸術スクール。ウェブサイトURL https://www.takumi.ac.jp/index.php

カネコ小兵 伊藤社長(以降、カネコ小兵):ものづくりに関心を持ってもらえるのは嬉しいですね。うちだと求人を出すと、「製造がしたい」「焼き物が好き」っていう人が来てくれるんです。だから、うちの従業員には焼き物好きが多いですよ。

深山:家具の製造もやきものと同様に手仕事が多くて、スタッフのモチベーションでクオリティーも変わるような気がします。日進木工さんではスタッフのモチベーションが上がるような何かをされてますか?

日進木工:皆さんの仕事がユーザーに届いて、そこではじめて気に入ってもらえるかどうかが決まるんだよ。と言う様な事を伝えるようにしています。使い手の声の様な、営業からのフィードバックも工場に伝えたりしてますね。

●日進木工 北村社長/  https://www.nissin-mokkou.co.jp/

深山:これだけ人数が多いと、伝達も大変じゃないですか?

日進木工:スタッフとはもちろんですが事業継承の面でも伝達は試行錯誤ですね。どこの会社さんもそうだと思いますが、代替わりは大変ですね。松崎さんのところはどうですか?

作山窯 高井社長(以降、作山窯):深山の会長は毎日会社に来てらっしゃいますか?

深山:ほぼ毎日来てます。体力的な事もあるので、ちょっと遅めに来てちょっと早めに帰るとういうような形ですけど。父は昭和19年生まれの78歳になるんです。代替わりをしてもう10年くらい経ちました。色々ありましたが、何より時間が解決した事は大きいですね。代替わり当初はまだまだエネルギッシュでしたが、少しずつ変わってきましたよね。

●深山 松崎社長/  http://www.miyama-web.co.jp/ 

カネコ小兵:日進木工の会長さんは?

日進木工:朝8時から夕方6時くらいまで仕事していますね。仕事が好きなんです。事業継承は5年かけて着実にと言う予定なのでまだまだ時間が必要だと思ってます。伊藤社長はご子息が入社されましたよね、いかがですか?

カネコ小兵:私の場合は渡す側になる訳ですが難しいですね。朝礼や会議に参加はしますが、それ以外は出来るだけ控えようと思っています。言いたいことはありますが、それも経験だと考えて俯瞰しています。

●カネコ小兵 伊藤社長/ https://www.ko-hyo.com/

日進木工:そうなんですね。高井社長のところはどうですか?ご子息が入社されているんですか?

作山窯:私は当時の環境もあって代替わりというより改めて自分で創業したような始まりかたでしたが、創業当時は父に色々相談はしていました。息子は入社していないので、僕の代で終わりですかね(笑)。

●作山窯 高井社長/ https://www.sakuzan.co.jp/

カネコ小兵:高井社長はトラアスロンしてサーフィンしてゴルフして多趣味で、仕事は仕事、趣味は趣味として分けて考えられているのは、今の人材と共通する面があると思うんだよね。社長の姿勢が、会社の形になってる。

深山:美濃焼の中でもブランドとしてこれほど浸透している作山窯さんが終わる訳は無いので(笑)。重要なのは高井さんの役割を誰が受け継げるか?というところですよね。

カネコ小兵:北村社長のお子さんはおいくつでしたっけ?やはり継いで欲しいですか?

日進木工:3人います。一番上の中学1年生の息子が小学校の卒業文集に将来の夢として「たくさんの人に愛される家具を作る家具屋」と嬉しいこと書いてくれました。自主的に興味を持ってくれたら嬉しいから、早いうちに仕事に触れてもらえたらなと思ってます。

カネコ小兵:素晴らしいやないか!

●北村社長の息子さんが小学校の卒業文集に書いた『将来の夢』

カネコ小兵:いや、貴重な時間をありがとうございました。素材は違っても同じものづくりとして、同じ岐阜県の中で活動されている日進木工さんの姿はとても興味深く刺激的でした。

日進木工:こちらこそ遠くまでありがとうございました。同じ岐阜県内で、近しい想いを持って活動されている參窯さんとお会いできて嬉しかったです。

●材木置き場での記念撮影。学びの多いご訪問でした。

2022年11月25日掲載)⇒第六回座談会は今回で最終回です(第六回座談会の総集編はコチラから。)次回の第七回座談会では、2022年に大きな問題となった諸原料の高騰やそれによる価格改訂。そこから改めて価格について話し合いました。*12月中旬より掲載予定(毎週金曜掲載)です。


〉〉〉「三窯行えば、必ず我が師あり」一覧に戻る

■過去の座談会記事一覧

〉〉〉第五回座談会『野口さんとふりかえる2021年』アーカイブはこちらから

〉〉〉第四回座談会『美濃焼について思うこと』アーカイブはこちらから

〉〉〉第三回座談会『作り手の大切な器、我が家の食卓』アーカイブはこちらから

〉〉〉第二回座談会『作り手として感じる、それぞれの窯元の凄味』アーカイブはこちらから

〉〉〉第一回座談会『參窯のはじまり』アーカイブはこちらから


〉〉〉■ご意見、ご感想、お問合せはコチラから


・・・・・各窯元ウェブサイト・・・・・

參窯その1:カネコ小兵製陶所(岐阜県土岐市下石町)https://www.ko-hyo.com/

參窯その2:作山窯(岐阜県土岐市駄知町)http://www.sakuzan.co.jp/

參窯その3:深山(岐阜県瑞浪市稲津町)http://www.miyama-web.co.jp/


・・・・・參窯ミノウエバナシ contents・・・・・

●ブログ「三窯行えば、必ず我が師あり」

●ブログ「うつわ、やきもの相談所」

●作り手に聞いてみたかったことがある》》》 ご質問はコチラへ

●オンラインストア「outstanding products store」

 ●イベント案内「歓迎/出張ミノウエバナシ」

産地でのファクトリーツアーや消費地でのワークショップなど、リアルなイベントのご紹介です。

●參窯(さんかま)へのお問い合わせは 》》》 こちらへ



 

関連記事

PAGE TOP