『伊藤家の食卓で交わる二種のうつわ(後編)』カネコ小兵 伊藤社長の場合(第二話)‐作り手の大切な器、我が家の食卓‐

『作り手の大切な器、我が家の食卓』カネコ小兵製陶所の伊藤社長編 第一話から続く 


―(第二話)カネコ小兵 伊藤社長の大切な器、我が家の食卓(語り手:カネコ小兵・伊藤社長 聞き手:作山窯・高井社長、深山・松崎社長、野口品物準備室・野口さん、司会:深山・柴田)

『重箱 漆ブラウン 三段重』

【伊藤家の食卓で交わる二種のうつわ(後編)】

司会:このお重もご家庭で使われているんですか?

カネコ小兵 伊藤社長(以下、カネコ小兵):そう、次はこの重箱。作ったのは10年以上前で、現在のぎやまん陶に使ってる漆ブラウンっていう釉薬を作った時*1に、この色合いを起点に開発した器です。この漆ブラウンの色合いのモチーフである漆の溜塗ではこうした重箱は当然よく作られていますが、陶磁器ではというと、当時、丸い形の重箱なら作られてますが、四角はないだろうと思って作ったんです。

深山 松崎社長(以下、深山):そうですね。うちでも作っていますけど丸い形の重箱です。

『深山の重箱。直径13㎝程度だが、それでも正方形で作る事が難しく丸い形とした』

カネコ小兵:四角形って作り手ならわかると思いますけど、きちんと焼きあげる事が本当に難しい*2。焼成の時にこの一番大事な直線の部分が歪むから蓋がうまく収まらなかったりして、きちんと焼きあがるように微調整するのにかなり苦労して作りました。でも、道具としては漆の重箱と違って冷蔵庫に入れてもいいし、電子レンジにもかけられる、もちろんジャブジャブ洗える。使い易さという点では、漆の重箱と差別化できる特徴は出来ました。

『きちんと正方形に作られるお重に興味津々の野口さんと松崎社長』

カネコ小兵:難しい形を上手く作れたし、電子レンジや冷蔵庫など木製である漆とは異なる使い方のできる器になりましたが、やっぱり重箱は重箱なので、実際はお正月やハレの日などで少しずつ注文が入るくらいで、どうしても季節やイベントに影響される器だなと思ってたんです。でも妻がおはぎを頂いた時に、この重箱に入れてお茶の時間に出したんです。

『左:重箱に盛りつけたおはぎ(粒あん、きなこ、ごま) 右:重箱と梅皿について語る伊藤社長』

司会:美味しそうですね。日常での重箱の使い方っていう感じがします。陶磁器ならではの重箱の使い方かもしれませんね。

カネコ小兵:イメージでは重箱だから正月とか決めつけていましたが、こうして使ってみると新しい着想を得れます。他にもインスタライブを行った時にはこの重箱にパスタを盛り付けたり、ご飯を入れて豚肉炒めたものを盛りつけて緑色の葉とかを添えるとお弁当みたいで結構いいよとか・・・そして、そこから広がって(写真の)重箱の手前にある梅皿は大福とかきなこ餅などのお茶うけの和菓子に映える事に気づいて、このショールームでは重箱と梅皿を組み合わせて展示するようにしました。

司会:なるほど、前編のぎやまん陶と蕎麦前徳利がつながったように、今回は食卓のうえで重箱と梅皿がつながったわけですね。

カネコ小兵:繰り返しになっちゃうけど、こうして自分が作った器を自分が食卓で使ってみると、自然と検証して、新しいものづくりにつながっていると思います。まずは使ってみるというのがうちのものづくりの原点かな。2021年7月9日掲載)⇒第3話『作り手の大切な器、我が家の食卓』カネコ小兵 伊藤社長の場合に続く・・・*7月16日掲載予定(毎週金曜掲載)


●脚注:*1.漆ブラウン誕生の経緯は【漆塗りの色と雰囲気を表現した酒の器】あたりでご紹介しています。 *2.陶磁器は焼成の際に収縮して小さくなります。陶器か磁器かによりその収縮率は異なりますが10~15%程度小さくなります。小さくなる原理は、焼成前の器は顕微鏡レベルだと表面や内側に隈なく小さな穴が開いている多孔質と言う密度が低い状態なのに対し、焼成すると素材が溶けだしてその小さな穴に入り込み、そのあと冷却時に固まると小さな穴は無くなり密度が高い状態となります。その無くなった穴の分だけ小さくなります。この小さくなる時は素材は溶けて柔らかい状態なので物理法則に従って動きます。その動き方は器の形により違いがあり、その動きを予測しながら器の原型を作るわけですが、その中で最も予測が難しいのが今回の重箱にあるような直線部分です。直線面は周辺に抵抗が無いので良く動きますが、角の部分はそれ自身が抵抗となるためあまり動きません。そのため基本的な傾向としては、直線面が内側に剃って入り込む状態になり易く、そうすると重箱の様な蓋が必要なものだと蓋が入らなくなってしまいます。それを防止するために予め外側に膨らませた形にしたり、厚みをもたせたりしますが、その最適解は器の大きさや釉薬の特性にもより異なるので、現実的には少しずつ形を調整して試作する以外の方法が無く、実験のような試作過程が必要となります。そのため四角形の器は、開発が難しく、時間がかかります。 


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