NEW(質問①前編)この1~2年の間に好転したことを教えて下さい‐野口さんと振り返る2021年‐

 2021年12月、改装されたカネコ小兵さんのスタッフ休憩室にて開催した同年最後の座談会では、參窯の始まりからお力添え頂いた野口品物準備室の野口さんをお招きし、司会進行を頂きました。

今回は敢えてテーマを決めずに、東京で伝え手としてお仕事をされる野口さんからのご質問をもとに、ざっくばらんに2021年を振り返ってのお話などを伺いました。


―(質問その一)この1~2年の間に好転したことを教えて下さい(前編)―(司会:野口品物準備室 野口さん、語り手:カネコ小兵 伊藤社長、作山窯 高井社長、深山 松崎社長)

野口品物準備室 野口さん(以降、野口さん):皆さん宜しくお願いします。今年も気づけば12月で色んなことがあった1年ですが、この座談会はなるべくネガティブにならないようにしたいですね。真っ先に僕が言ってしまいそうですけど(笑)。

まずは、コロナ渦となったこの1~2年の間で何か良くなったことがあったかをお聞きしたいなと思います。確かに、いろいろと動きを封じられたことがありましたが、反面、そうした環境下だからこそ半強制的にやらなくてはいけなくなった事や、その結果として良かった事などがあるんじゃないかと思います。

この質問を深山の柴田さんに伝えたら、僕にも聞いてみたいと、展示会や出張が封じられた頃の事や、他産地の作り手さんたちがどういう取り組みされたのかと逆質問されましたので、先に私からお話しますね。

イベントも大分中止になったりとかやっぱりネガティブになっちゃうんですが、辛い時期ではありました。でも周りを見渡すとモノづくりの方々にとっては大きな転換というか考えて切り替えなきゃいけない時期になったなと。販売の機会が減ったことで自分で販売の場所を設ける、それこそオンラインショップを始めた方は多かったですね。あとは展示会や打ち合わせもオンラインでミーティングすることは多くなりました。

一応、そうやって厳しい状況でも仕事は進むものだとは感じたのですが、現在、感染状況が少し落ち着いてやっと出張や打ち合わせが出来て、直接会えるようになると、やっぱりそこでの雑談や、脱線する笑い話がモノを考える上で大事だなと改めて感じています。

●昨年9月、野口さんの運営に関わり開催された銀座松屋の手仕事直売所。作り手や使い手とリアルにつながる事ができる久しぶりの場所となった(詳しくは野口さんによるイベントリポートをご参照下さい)

野口さん:僕の話はこれくらいにして(笑)、まずは松崎社長からお願いします。

深山 松崎社長(以降、深山):質問を事前にいただいても考えがまとまらないものだからノープランで臨むんですけど、最初に来ると困りますね(笑)。確かに売上や利益率を見れば良くないけど、やっていることの中にはもともと本当に必要かどうか分からない内容も多くあって、これから5年後までに徐々に起きたであろうことがこの期間にまとめて起きたと思えば、5年後にワープができた感覚で、今は本当に必要とされている仕事に注力できる環境になりつつあるのかなと思います。例えばたくさん受けていたOEM*1の仕事の中には、その単価や納期では受けられないんだけど、それまでの関係から断れず無理して合わせようとしていたが、でも今は本当にできない状態になったので、はっきりと出来ないことが出来ないって言えるんですよ。

●近年の変化を語る深山の松崎社長(左)と聞き入る野口さん(右)

野口さん:断れるようになったっていうことですか?

深山:「はっきり言えるという事」に関連しますが、自動車メーカーなどで運用されていた生産方式、所謂カンバン方式。必要な量を必要な時にと言うあれです。産業を席巻していたその生産方式ですが、コロナ禍で半導体が不足し自動車メーカーですら製造が滞り工場稼働をストップした事がありましたよね。そうした状況を見るとやはりリスク回避のためにも在庫の必要性が再認識*2されていると思います。弊社でもミヤマプランニングという販社があるので殊更そう思うのですが、販売会社にはお客さんに製品を供給するという責任が存在します。その為、適性な範囲内で在庫を持たなければいけないと思うんです。

近年、問屋さんは「在庫を持たなく」てもやってこれていたと思います。それは窯元がカンバン方式などを意識してどうしたらタイムリーに供給できるか工夫してきたからです。しかし、このコロナ禍で人手不足などにより製造能力が落ち、産地内のキャパは減ったと思います。タイムリーな供給が難しくなったんですよね。

●産業とはいえ、人の手によるものづくりを行う陶磁器製造。その最適な生産環境とは?

深山:だから、これから製品を供給するという責任を保つためには在庫を持つ必要がある。問屋さんの業務に価値を見出してもらえる環境が、将来は少しだけ作られる気がします。このコロナ禍となってものづくりが如何に脆い地盤の上にあるかという事が分かった。そして、今、その理解が地場産業の中でもされつつあるのかなと少し希望的に思っています。

そして、もう一つ、これはコロナ禍だけが要因ではないですが、燃料や顔料・原料など様々なコストが上がってきているので、作り手がこれだけ手間をかけてこれだけコストかけて、尚且つこういう付加価値を提供していますということが言いやすくなってきた。値段に反映しやすくなってきた。コストが上がるのは残念ですが、業界の方はコストが上がることはやむなしという状況でもあると思います。それで僕らも言いやすくなってきたのかな。

これは好転してきたこととはまた違いますね (笑)。勝手に僕が業界の現状を過大解釈しているだけで、他の皆様はもしかしたらそんな余裕はないと思ってるかもしれないですけどね。

●お祝いの花がならぶカネコ小兵の改装されたスタッフ休憩室から

野口さん:しっかりしたコミュニケーションがとれて、理解をしてもらえるようになってきて、在庫を持つとかそれぞれの本来の機能を取り戻すところが出てきそうという期待ですね。2022年1月14日掲載)⇒第5回座談会「(質問その一)この1~2年の間に好転したことを教えて下さい(前編)」に続く・・・*次回1月21日掲載予定(毎週金曜掲載)


●脚注:*1.OEMとは自社デザインの製品ではなく、他ブランドからの生産委託を受け製造する製品。英語のOriginal Equipment Manufacturingの頭文字をとったもの。 *2.美濃焼は元々、窯元と問屋の分業により生産から販売まで行っていた。問屋の存在意義の一つは作り手と使い手の間にあるジレンマを埋める事。具体的には作る数量と使う数量の差を埋めること。産業での食器製造には、いわゆる生産ロットとして一定数を生産する必要があり、かつ納期も必要となってくるが、使い手で必要な数量はそれほど多くなく、反面、できるだけ早く欲しいという要望が多い。作り手と使い手だけではバランスが悪い供給と需要の間に問屋が入り、製品の在庫を持つことで、作り手は効率的な生産が可能で、使い手は必要な数が必要な時に手に入っており、そのバランサーとして問屋の役割は大きかった。しかしトヨタ自動車の看板方式に代表されるような必要なものを必要な時にと言う思想のもと窯元が工夫を重ね短納期での少量多品種生産に対応したり、一部窯元では問屋の様に在庫を持つようになると、問屋の存在意義は薄れた。窯元がこうした事を行った背景には売上を増やしたい、生産量を維持したい思いもあった為であるが、コロナ禍の昨年末頃から少しずつ経済が戻る中、窯元にも注文は増加したが、喫緊までの状況を鑑みると生産を元に戻す不安もあり“無理をして生産しない”という選択を窯元が行った。かつては注文をこなすために残業をしたり休日も生産を行うこともあったが、それよりも今できる生産量だけしか作らないというこの選択により、改めてバランサーとしての問屋の存在に期待がもたれる。


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