(質問③前編)会社と自分、10年後どうありたいか?‐野口さんと振り返る2021年‐

カネコ小兵にて行った第五回座談会『野口さんと振り返る2021年』*(質問②後編)「參窯の活動で起きた変化は?」から続く


 ―(質問その三)会社と自分、10年後どうありたいか?(前編)―(司会:野口品物準備室 野口さん、語り手:カネコ小兵 伊藤社長、作山窯 高井社長、深山 松崎社長)

野口品物準備室 野口さん(以下 野口さん):では最後の質問を伺います。

作山窯 高井社長(以下 作山窯):これが一番難しいよね。

野口さん:僕も10年後は57才ですが、全く想像つかないのでこんな質問をするのも酷かもしれませんが、作り手であり経営者である皆さんが想い描く企業としての10年後と、そことは少し離れてご自身の10年後がどうありたいか?を伺いたいです。

カネコ小兵 伊藤社長(以降、カネコ小兵):僕が一番酷だよね(笑)。10年後は75才なわけで、まだ動けてるのかなって思うよ(笑)。会社はこれからは息子に受け継いでいくから、良い事業承継をして、スタッフをしっかり雇用し続けて、そして何か発展してくれたらいいなと思う。個人としては考えると不安だね。高井社長のサーフィンみたいにのめり込める趣味がないわけで。せいぜいゴルフくらいかな(笑)。でもやっぱり、やきもの業界でモノづくりに携わってきたのは好きというか楽しかったから、10年後もいい器をみたり、食器を作ってみたいなと思いますね。

●窯や小兵での試作品展示の看板を携えたカネコ小兵の伊藤社長

カネコ小兵:そうそう、前回の「窯や小兵」では試作品*1の展示をして、いま僕こんな事を考えてるよって伝えてみたんです、そうしたら意外に面白がってもらえて・・・僕はデザイナーじゃないし、社長としての役割は経営で、実際に経営をしてるんですけど、でもやっぱり焼き物って良いな、作ることって良いなって思うようになりましたね。

野口さん:伊藤社長の10年後は事業継承がポイントになりますね。皆さん少しずつ年代が違いますから、それによる違いもありますよね。高井社長はいかがですか?

作山窯 高井社長(以降、作山窯):今58才だから68才になりますね。僕も多分、仕事はやってないですよ(笑)。できるだけサッと退きたいと思ってます。息子がやるかやらないかわからないし、今うちにいる子達でいい子がいれば譲っちゃうつもりでいます。

●工場を見渡す作山窯の高井社長の背中(昨年8月撮影)

野口さん:息子さんじゃなくても譲るんですか?*2

カネコ小兵:今、息子さんてニューヨークにいたよね、もういくつになるの?

作山窯:26才かな?まあどうするか知らないですけど。想いのある子がやらないとだめだから、息子じゃなくても。全然それはかまわないと思ってるんですよね。

野口さん:では、もう10年後は会社を譲って趣味に没頭するということですね。

作山窯:そう。毎日海に入って。いいでしょう?(笑)

野口さん:うらやましいですね(笑)。松崎社長はいかがですか?

●野口さん(右)の質問に答える深山の松崎社長(左)

深山 松崎社長(以下 深山):僕はいま49才だから59才になってますね。

カネコ小兵:10年後がちょうど今の高井社長の世代だね。

深山:高井さんだと基準が高すぎますね(笑)。まず10年後にも会社がきちんと在るようにしなきゃいけないですね。ただ、今は10年後っていうスパンは経営には長すぎて、意外に現実味が無いから、5年後でも悩みますね。

作山窯:でも過ぎてみると10年はめちゃくちゃ早いよ。

深山:そうですよね。10年が長いか短いかという事だと、たまたまですけど、昨日の夕方、製造スタッフが窯に火がつかないと言いだしたんです。調べてみると点火をする変圧器が壊れているのでガスは出ているのですが、点火しなかったんです。なので応急処置としてバーナーを使って直接ガスに着火して、焼成は何とか出来ました。

●窯内のバーナーに火がついた状態。

深山:そでも、その慌てふためいた中で、窯の扉を閉めるのが少し甘かったので、炎が耐火ウールの裏まで入り込んで窯がダメージを負ってしまったんです・・・2022年2月11日掲載)⇒第5回座談会「(質問その三)会社と自分、10年後どうありたいか?(後編)」に続く・・・*次回2月18日掲載予定(毎週金曜掲載)


●脚注:*1.陶磁器の試作品は大きく分けると二つある。一つは目指す製品が具体的にある開発的な試作。もう一つが焼成で起きる変化を検証するような実験的な試作。実験的な試作は、焼成してみないと判断ができないやきものにおいてはとても重要で、例えば「赤い色の釉薬を作りたい」とした際に調合する様々な原料の比率を少しずつ変えて、“鮮やか”なのか“淡い”のかといった発色具合や“光沢”か“マット”かといった質感具合をテストする。その際に元々は鮮やかなものを作りたいと思っていても、淡い質感が想定外に良い雰囲気になっていたりすることもある。実験的な試作は素材との対話のような存在。 *2.工芸的な産業ではある程度規模のある企業でも家族間で事業継承を行う事が多い。それは単純に家族だからということだけでない。工芸的な産業のものづくりは“0か100か”という明確な基準ではなく、その素材の持つ丁度良い段階で仕上げる必要がある。工業製品の様に厳密に検査したら少しずつサイズが異なっているかもしれないが、その差が生まれてしまう素材の持ち味を重視したものづくり、そうした何を良しとするのかの判断基準を知識としてではなく、地域に根付いたものづくりと小さなころから自然な距離感で接した感覚で身に付けている。その価値観を自然に大切にできる感覚は経営者の家族であるからこそ身につくものかもしれません。


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