(質問③後編・最終話)会社と自分、10年後どうありたいか?‐野口さんと振り返る2021年‐

カネコ小兵にて行った第五回座談会『野口さんと振り返る2021年』*(質問③前編)「会社と自分、10年後はどうありたいか?」から続く


 ―(質問その三)会社と自分、10年後どうありたいか?(後編・最終話)―(司会:野口品物準備室 野口さん、語り手:カネコ小兵 伊藤社長、作山窯 高井社長、深山 松崎社長)

(前回のお話)深山 松崎社長(以下 深山):たまたまですけど、昨日の夕方、製造スタッフが窯に火がつかないと言いだしたんです。調べてみると点火をする変圧器が壊れているのでガスは出ているのですが、点火しなかったんです。なので応急処置としてバーナーを使って直接ガスに着火して、焼成は何とか出来ました。

カネコ小兵 伊藤社長(以下 カネコ小兵):点火はちゃんと確認しないとね。昔は窯の爆発もよくあったからね。ガスを出し続けてる事に気づかず、そのあと火をつけてボンといっちゃったりね。今のシャトル窯は構造的に上部を弱く作って天井から飛ぶ*1ようになってるから被害は抑えられるらしいけど、いずれにしても火をつけるのは気を付けないといけない。でも、作山窯もそうだと思うけど、うちもベンチュリ方式*2だから、そもそも火は手で付けるよ。自動点火なんてなかなか無いよレンガの窯では。

深山:ベンチュリみたいに本来、手で点火するものなら良いですが、深山の場合は自動着火で本来は手動で点火することができない窯に着火する必要があった訳で・・・

カネコ小兵:それはちょっと怖いね。

深山:窯については、かねてから創業者である父と話してたんです。僕が70才までと思うとあと20年ある訳で、そうすると今の窯ではだめだからこれをどう変えていこうか?という事を。

作山窯 高井社長(以下 作山窯):いま窯を立て直そうとすると1000万ではきかないよね。

●作山窯の窯詰め風景。手前の台車にうつわを積んで奥の窯に入れて焼成する。

深山:そうですね。特に使用する耐火ウールの耐用温度次第では格段に費用が変わってきますね。その矢先でこの失火騒ぎなので、ハッとしました

野口品物準備室 野口さん(以下 野口さん)窯には耐用年数があるんですか?

深山:年数というか、窯元によって毎日焼くところもあれば、一週間に一回くらいしか焼かないとか1か月に何回しか焼かないっていうところもあるから、どうなんですかね?

●カネコ小兵の窯。右手前が焼き上がった台車。奥の窯の内側を覆う白いものが耐火ウール。

カネコ小兵:回数分からないけど、うちは代替わりの時に窯を新しくしてるね。だから大体20~30年くらいかな。窯の壁に使うレンガも焼いてるうちにボソボソになって耐火度も含めてボロボロになってくるからね。あと、ちょっと面白い話だけど、昔の穴窯や登り窯の窯跡を調べると、それらも大体20~30年で場所を変えて作り直してたらしいよ。理由は現代と違って、窯の周りの雑木から何から薪にして全部燃やしちゃうから、燃料を求めての作り直しらしいです。結果的にはレンガの時代も、レンガじゃない時代も窯は20~30年で一つの寿命みたいなものって聞いたことはある。とはいえ、今はレンガのレベルも上がったり、より安定したファイバーだったら年数というよりも回数かな。作山窯の窯は築何年くらい?

作山窯:うちも古いですよ。でもレンガは5年くらいで張り替えるようにしてますよ。

深山:メンテナンスは大事ですね。うちはほぼ毎日、窯に火を入れるんです。週休二日で多少は焼かない日もあったとしても年間200回焼いたら20年で4000回以上焼いてるんですよ。もう無理ですねって窯が言ってくるような気がして(笑)。そういう意味では設備で考えると逆に10年後では短くて、20年くらいやる覚悟が必要ですよね。もちろんやりますけどね。

野口さん:じゃあ深山さんは来年は窯を変えるということで(笑)。それぞれの10年後のお答えありがとうございました。ちょうど10年くらいずつ世代が異なる皆さんのお話興味深かったです。これで一年の締めくくりとなりますね。

深山:あとは秋葉様へお参りに伺ったら今年も終わりですね。

●秋葉神社のお札。

野口さん:秋葉様とは?

深山:浜松の山の上にある火の神様の神社*3です。

野口さん:静岡県ですか。美濃地域に無いんですか?

カネコ小兵:支社とかも沢山あるけど、やっぱり本山に行かなきゃご利益がないからね。でも秋葉様に上手に窯を焼いてくれるようにお参りいく窯元も多いけど、それも確かにあるけど、元来は火防(ひよけ)の神様で火事になりませんようにっていうお参りが大事だからね。

深山:そうなんですね。とりあえず新しいお札をもらいに行かなきゃいけないという使命だけで行ってました。

カネコ小兵: (笑)

作山窯: (笑)

深山: (笑)

野口さん: (笑)

●座談会の面々。左上より野口さん、伊藤社長、松崎社長、高井社長。

2022年2月18日掲載)⇒うつわやきもの相談所「ギャラリーショップMINO店長重松さんからのご質問に続く・・・*次回2月25日掲載予定(毎週金曜掲載)


●脚注:*1.シャトル窯は三つの窯元が使用しているタイプの窯。四角形の箱型が多く、その構造は鉄枠の中に耐火レンガを敷き詰め、更にその内側をファイバー素材の耐火ウールで覆う。その中にうつわを組み上げた台車を入れる。四角形の側面の一つが台車を出し入れする扉となる。窯が爆発する場合は全てが同じ強度だと扉側が爆発する可能性が高く人的被害の可能性もある。その為、意図的に天井面の構造を弱くして爆発の力が上に向かうようにすることで、最悪の場合の危険に対処している。工場で使用される窯の形態には、もうひとつトンネル窯と言う形態もある。 *2.ベンチュリ方式とはガスバーナーの形式。ガスは実は単体だけでは燃える事は出来ません。ガスが燃えるためには「酸素(空気)」が必要となります。安定的に器を焼く為には窯の中を一定にコントロールする必要があり、そのためには空気も安定して取り込む必要があります。ベンチュリ方式のガスバーナーには空気の取り込み口がありガスが噴出する勢いを利用して自然に吸気しガスと空気の混合比を調整し安定的な焼成を行います。この空気の吸入はバルブなどで量を調整する事ができるため、それにより温度を上げるスピードや焼成の雰囲気を変える事も出来ます。しかしその調整は窯の大きさなどにより変化する為、日ごろの焼成状況をつぶさに確認しながら狙った焼成雰囲気をテストする必要があり、そこに窯それぞれの特性が生まれます。ベンチュリ方式の場合は着火もこのガス量の調整もバルブの開け閉めも手動で行います。 *2.正式名は秋葉山本宮秋葉神社。ウェブサイトもある https://www.akihasanhongu.jp/


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