『見てわかる安心感。触れてわかる軽やかな使い勝手』リンカの器(カネコ小兵)

■器:リンカシリーズ、■おすすめする人:カネコ小兵製陶所 伊藤社長

-代表作「ぎやまん陶」の6年後に誕生し双璧をなすほどに育った「リンカ」シリーズ。その成り立ちに込めた想いをカネコ小兵製陶所伊藤社長にお話頂きました。-

●ショールームにてリンカシリーズを前にして当時のお話をするカネコ小兵製陶所 伊藤社長

 リンカシリーズの開発をはじめたのは2014年です。その頃はぎやまん陶シリーズが評価をされはじめ実績も出来ていた時期で、その期間にいつか作りたいと温めていた器がこのリンカシリーズです。現在18アイテムくらいあるこの器ですが、最初は14㎝プレートから作り始めました。

 そもそもが手作り感があって軽いけどフチが厚くて割れにくいものが作りたいという想い、それは、ぎやまん陶から続く【丈夫でジャブジャブ洗えるうつわ】につながる想いなんですが、それがありました。

●リンカシリーズ。見た目からも感じられる安心感と触れることで感じられる軽やかな使い勝手

 でも、それまでの手作り感のある産業の器って本物らしさが無いと感じてたんです。それは産業では器の原型を石膏で作るから物理的に無理なのかなと思ってたので。でも、たまたまなんですが僕の後輩に石膏ではなくて、土で原型を作れる原型師がいたんです。土で作る彼の原型なら手作りの質感を表現出来るのではと考えて彼に頼んだんです。そうしたらやっぱりやってくれました。

 その上でもちろん釉薬にこだわりました。特にこのマットな質感を安定させるのは苦労したんです。マット釉って少し温度が変化すると艶が出てきたりして安定しないから。

-発表当初の評判はいかがでしたか?-

●はじまりの三種のリンカ。右の16cmボウルが加わり、その想いが満たされた。

 最初は14㎝プレートともう一点、2種類の器を作り5色で展開したんですが全く売れなくて・・・。それで2種類だと使い方がイメージできないかなと思って、何とかしたくて16㎝ボウルを作ってアイテムは3種に増やして、でも色は多いと製造も難しいし、選ぶのも複雑かと思って、定番的な白と黒の2色にしました。そうしたら少しずつ売れ行きが良くなったんです。

-まずは小さなサイズの器から作り始めた訳ですね。大皿などがあったら目立つような気がしますが…-

●様々な暮らしの形と調和するリンカシリーズ。思うままに食卓で。

 目立つかもしれないけど、初めて見た器で最初から大きいもの買う人は少ないような気がして。それよりも最初は親近感のあるアイテムを作りたかった。入門編みたいに、まずは小さいアイテムを使ってもらって良かったらもっと大きいものがあるよっていう提案ができる。

 それからは評判に合わせて色々作りました。大きなアイテムとして24㎝プレートを作って、その使い方を悩まないように組み合わせて使えそうな8㎝ボウルや12㎝ボウルと増やしました。そうするうちに“程よい小ささ”が欲しいねとか、海外では“もっと大きいうつわ”が欲しいとか、“個性のある変わった器”が欲しいねとか、声を頂きはじめて、それに応じて徐々に種類が増え現在は18種類の器になりました。

-伊藤社長もリンカをご自宅でも使われるんですか?-

●器は実際に使われる奥様の意見を聞きながら・・・

 もちろん使います。そもそも徳利しか作っていなかった当時のカネコ小兵で”食器を作ろう”と考えた時から、何が良いか自分で知らなきゃいけないと思って色んな食器を買って使ってました。自分が作った器で、自分自身がで食べてみて、それで初めて人に勧められると思ってます。

 実際には僕は料理できないから(笑)妻が使い易いかどうかですけどね。16ボウルや24㎝プレートは毎日、食卓にのぼってる気がする(笑)

-奥様と二人三脚。素敵ですね。お話伺うと、はじまりが土の原形という事が実はポイントですね。土っぽく仕上げるのでなく、土の質感をきちんと原型から表現しているという。-

●左は焼いて完成した状態。右は釉薬を掛ける前。土を原型としただけあり、その質感があらわれています。

 そうですね、後輩の原型師の想いを形に残したというのは大きかったね。

 これからのやきものの製品開発は差別化が大切だと考えてます。原料も土も釉薬も買おうと思えば買える。それを受け入れ作るだけでは窯元の個性が生まれない。だから釉薬にこだわって、型にもこだわって、それらがそろって初めてものづくりは差別化が出来ると思う。そういう意味で言うと【釉薬のマット感と土原形】ってところがリンカの個性かな。

 釉薬の話をもうちょっとすると、このマット釉の焼成温度によって生じる少し雰囲気のある感じやぎやまんの釉薬が流れたところから見える磁肌の色が透けて少し白く見える味わいだとか・・・ロボットで塗れるようなものと一緒にならないようにこだわって作らないといけないと思ってます。

-味のあるものって色ムラなどの個体差がでますよね。開発当時の2014年頃はそうした個体差に対する反応はどうでしたか?-

●釉薬を施す作業。釉薬の比重や塗り方にポイントを定め、個体差を抑える。

正直に言えば、最初はあまり指摘は無かった。でも、売れはじめてくると個体差の課題は出てきました。それからは釉薬の度数(比重)を変えたり、窯の中の焼く場所を決めて焼成温度のブレを極力安定させるようにしています。個体差も味なんですけどその幅はある程度に納めたいと思って調整していますね。

なので開発時のこだわりはもちろんいっぱいあるけど同じくらい安定的な供給のための量産のこだわりもあるよ。焼成温度は一度単位で調整してきたし施釉の職人の癖によっても変わるから、それで変わらないように仕様は適切にしたりね。

-器はカジュアルに見えるのですが、生産は大変そうですね。-

●想いのつまった器リンカとその器を生み出した伊藤社長の手

 いや(笑)本当に難しいね。でも、そのこだわりを持たないと価値として認めてもらえないと思うから、妥協せずに作るようにしています。その分コストもかかるから最初の頃は高いって言われたし、窯や小兵(工場でのイベント)に来たお客さんもぎやまん陶の方が人気があった。だけど、試しにリンカを買って頂くと「実際使ったら使いやすい」って言ってリピートしてもらえるようになりましたね。やっぱり浸透していくためには、まずは使ってもらわないといけないね。2014年に誕生したリンカシリーズですが、本当に動くようになったのはここ2、3年なんです。

 でも、想いを持って生み出してきただけに、今の様にたくさんの方にお使い頂けるのは本当に嬉しいです。そして、これからもたくさん使って頂きたいですね(笑)。(おしまい)


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