(質問①後編)この1~2年の間に好転したことを教えて下さい‐野口さんと振り返る2021年‐

『野口さんと振り返る2021年』*(質問①前編)「この1~2年の間に好転した事を教えて下さい」から続く


 ―(質問その一)この1~2年の間に好転したことを教えて下さい(後編)―(司会:野口品物準備室 野口さん、語り手:カネコ小兵 伊藤社長、作山窯 高井社長、深山 松崎社長)

野口品物準備室 野口さん:深山さんはこの期間に将来起きるであろう懸念が前倒しで起きて、結果、問屋さんの在り方など周辺にも広がりそうというお話しでしたが、伊藤社長はいかがでしょうか?

●カネコ小兵製陶所 伊藤社長

伊藤社長(以降、カネコ小兵):確かに問屋と窯元(メーカー)の関係が変わってきたかなと思います。特に在庫の面において。メーカーにとっては少し良い環境になったかな?

 參窯のようにメーカー自身が発信することで、お客さん(問屋さん)が待ってくれるようになった気はします。「(納期が)長くなります」と言っても待ってもらえる状況になってきたのかな?と思います。ここがだめなら他の窯元の製品を代替用品にすれば良いという事ではなくて「これが欲しい」という感覚の人が増えたように感じます。

 そもそも発信においてはSNSが無かった時代は、問屋がそれなりに役割を担ってくれたんですけど、当然、問屋は色々な窯元の色々な製品を発信するから窯元としての特徴が伝わりにくかったけど、SNSの扱いが簡単になって窯元からの発信が楽になると、これも当然だけど自分たちの製品だけを発信できるから結果的にファンが増えてきて、店頭やウェブで探してくれたりといった求めるて頂けるってことが増えてきたと感じます。

 そうした事から、好転したことの一つに自社のオンラインストアとかネットは伸びてる*1ね。他にもふるさと納税の返礼品にも取り組み始めてこれが少しずつ増えてきてるなという感じがあった。

野口さん:なるほど、やはりオンラインの変化は大きかったんですね。ありがとうございました。最後に高井社長はいかがですか?

●作山窯 高井社長

高井社長(以降、作山窯):余分なものがそぎ落とされたね。お二人が話された通り、必要じゃないものが、本当に必要じゃなくなった。今まで20年30年とくすぶっていたものが整理されたんじゃないですか。それは良かった事じゃないですかね。それによって問屋は問屋として、メーカーはメーカーとしてのポジションがはっきり見えたと思います。その上で、在庫を持ち始める問屋も出てくれば、今まで通りのところもあると思う。それぞれが判断して変化が生まれるだろうね。それは、もちろん窯元も同じで今回をきっかけにする窯元も出てくると思う。

野口さん:今まで流れの中で慣習的に行っていた仕事を、ちょっと待てよと立ち止まって、考える事ができたと訳ですね。

作山窯:この參窯の活動もコロナ禍だったからまだ楽にできたと思いますよ。以前の産地の雰囲気でガンガンにやってたら、色々言われたり、もっと叩かれてると思うから、コロナ禍のタイミングだったから敢えてこれも良かったですよね。そんな見方もありますね。

●昨年唯一開催が可能となったセラミックパーク美濃での參窯の展示も当初予定より2週間遅れての開催となった*イベント詳細はこちらから

野口さん:嫌味は言われてないですか?

作山窯:言われてますよ(笑)。比較的少ないっていう事です。

カネコ小兵:ええやないか言い返すから。(笑)

作山窯:言い返さないですよ(笑)。相手にしないだけ。

野口さん:去年、作山窯さん単独のイベントを東京で開催されましたよね。いわゆる見本市に出展して問屋や小売店からの注文を受けるのではなくて、ユーザーへ直接販売するための受注会だったんですよね。ああいった形式はあまり見た事が無かったので、どういう反響だったのかなと思いました。

作山窯:特にそんな反響とかはなかったんですけど、自己満足でやったっていう感じですかね。ユーザー向けだから当然、大口の注文がある訳では無し、元々、受注会で売上を作ろうと更々思っていないので。自分の状況を確認する作業みたいなことですね。

●作り手の発信の在り方に変化を感じる野口品物準備室の野口忠典さん(右)と聞き入る深山の松崎社長(左)

野口さん:作山窯さんのイベントを拝見し感じた事があります。今は感染状況が落ち着いてギフトショーなど展示会*2も再開されていますが、これを機に考えを整理して展示会への関わり方も今までと異なる判断をする作り手も増えている気がします。独自に場所を借りたり、想いを共有できる何社かで小規模に行う事で、ターゲットとより深くとつながりたいという想いが強まっているのだと思いました。この1~2年は作り手にとっても転機となったんですね。2022年1月21日掲載)⇒第5回座談会「(質問その二)參窯の活動で起きた変化は?(前編)に続く・・・*次回1月28日掲載予定(毎週金曜掲載)


●脚注:*1.コロナ禍の中で陶磁器、特に食器も良くも悪くも大きな影響を受けました。ネットショップは主に家庭で使われるために購入頂けるので、おうち時間の中で食事の時間も愉しくすごすためにコロナ以前よりも購入が増えた。またふるさと納税のような取り組みについても認知が広がりご依頼は増加した。反面、大きく減少したのは飲食店向けと結婚式などの引き出物での利用。特に飲食店については稼働すらできない中なので当然食器を購入する機会も無いコロナ以前からすると9割減の時期もあった。參窯の三社は比較的多様な器を作っている為、柔軟に対応できたが、飲食店向けの食器専門の窯元などは影響を大きく受けた。 *2.メーカーや問屋が新製品を発表するのが展示会であるが、自社のみで開催する事は、会場の確保などの準備や集客において難易度が高く、小規模な事業社にとっては開催が難しい。そのため展示会運営会社が企画開催する共同展示会に出展する。ギフトショーなどはその一つで三日間程度の開催で20万人が来場する国内最大級のBtoB展示会。BtoBとは業者向けの展示会であり、その場所で小売りしているわけでは無く日本各地から来場する小売店のバイヤーさんなどに製品の紹介を行い、後日注文を頂くというもの。来場者が多いため開催される会場も東京ビッグサイトなど大規模な展示場が使われる。大きな会場で多くの来場者があるため最初のころの緊急事態宣言の際は中止となり新製品発表の機会を失ったが、2021年後半からは開催社も出展社も来場者も感染予防をしっかりと行い開催が再開された。


〉〉〉「三窯行えば、必ず我が師あり」一覧に戻る

■過去の座談会記事一覧

〉〉〉第四回座談会『美濃焼について思うこと』アーカイブはこちらから

〉〉〉第三回座談会『作り手の大切な器、我が家の食卓』アーカイブはこちらから

〉〉〉第二回座談会『作り手として感じる、それぞれの窯元の凄味』アーカイブはこちらから

〉〉〉第一回座談会『參窯のはじまり』アーカイブはこちらから


〉〉〉■ご意見、ご感想、お問合せはコチラから


・・・・・各窯元ウェブサイト・・・・・

參窯その1:カネコ小兵製陶所(岐阜県土岐市下石町)https://www.ko-hyo.com/

參窯その2:作山窯(岐阜県土岐市駄知町)http://www.sakuzan.co.jp/

參窯その3:深山(岐阜県瑞浪市稲津町)http://www.miyama-web.co.jp/


・・・・・參窯ミノウエバナシ contents・・・・・

●ブログ「三窯行えば、必ず我が師あり」

●ブログ「うつわ、やきもの相談所」

●作り手に聞いてみたかったことがある》》》 ご質問はコチラへ

●オンラインストア「outstanding products store」

 ●イベント案内「歓迎/出張ミノウエバナシ」

産地でのファクトリーツアーや消費地でのワークショップなど、リアルなイベントのご紹介です。

●コラム「ノグチサンのミノウエバナシ」

●參窯(さんかま)へのお問い合わせは 》》》 こちらへ



 

関連記事

PAGE TOP