『他産地、他素材のものづくりに触れて-日進木工(高山市)‐』(第五話)家具の技術で樽を作る。から続く
―(第六話)『FROM HIDA。そして使い手とのつながり』(語り手:株式会社日進木工 北村社長 聞き手:カネコ小兵 伊藤社長、作山窯 高井社長、深山 松崎社長 司会:深山 柴田)
司会 柴田さん(以降、司会):ウイスキー醸造所*1をオール「メイド・イン・飛騨」でというお話でしたが、似た言葉が日進木工さんのウェブサイトのトップにも出てきますね。
北村社長(以降、日進木工):そうですね山並みの写真に「FROM HIDA」という文字が浮かんできます。あのウェブサイトは社長になる前の2016年。70周年の少し前に作りました。ご覧になる方が「おっ」と感じるウェブサイトを作ろうということで・・・。その頃の私のテーマは、ブランディング、海外戦略、そして地域資源を活かす事だったんです。
ブランディングと言う点では、この一階のショールームについても取り組みました。以前はショールームが3、4階にあり、この一階は昔ながらの事務所でした。そのため、お客さんがショールーム来ても、昭和っぽい事務所を通る必要があり、それでは良い印象を持たれないのではと考えて、思い切って大リノベーションしたんです。
深山 松崎社長(以降、深山):ここにはカフェもあるので、一般の方もいらっしゃるんじゃないですか?そういうお客さんは家具もここで購入されますか?
日進木工:そうですね。特に、土日は他県から来るお客さんが多いです。家具を買いたいという方もまあまあいらっしゃいますよ。でも基本的には、お住まいの地域のショップで購入頂いた方がメンテナンスや配送を含めて便利ですよとはお伝えしてます。その上で、やはりここで買いたいという方には販売もしていますね。
司会:食器の場合は配送やメンテナンスはあまり無いので、どちらかというと使い手とコミュニケーションしてつながる事が目的で、比較的気軽に販売対応するのですが、家具の場合は、その場でお渡しするわけにもいかないし、配送やその後のメンテナンスが必要ですよね。メーカーでそこまで対応するのはなかなか難しそうな気がします*2が、そうした部分で使い手との関りはどうお考えですか?
日進木工:まず商売の道義として、他のショップでうちのことを知ったお客さんの場合は「そのお店でご購入頂けるとありがたいです」とご対応するようにしています。ただ、ショップで見た訳でなく、SNSなどで日進木工の事を知り興味を持って来ていただける方もかなり多くて、そういった方に小売店さんを紹介しても、なかなかそこまで行って購入される方は少ないです。だからそうした方にはご対応しますね。配送やメンテナンスも含めてですね。
カネコ小兵 伊藤社長(以降、カネコ小兵):わざわざここまで足を運ぶ人は、作り手のこの場所で買いたいんですね。単に買うだけでなくて、思い出にもなるから。
日進木工:そうですね。そう思うとまだまだショールームの活用が出来てなくて、イベントなどで足を運んでいただけることを考えたいですね。そこは課題です。
作山窯 高井社長(以降、作山窯):工場見学などは行われているのですか?
日進木工:そうですね、突然の場合でも希望があれば一般の方でもご案内しています。工場は一貫生産*3で、それが全てこの裏側にあってすぐ行けるので・・・。ショールームに来られて、工場もここにある事を知ってから見学を希望される方も結構いらっしゃいます(笑)。
カネコ小兵:ショールームは毎日オープンしているんですか?
日進木工:お盆やお正月は休みにしていますが、それ以外は出来るだけ開けるようにしています。とくにカフェは家具が目的ではない方にもご利用して頂きたいと思っています。どうしても高山市民にとって飛騨の家具って「高いよね」と言う印象で、敷居高く感じてらっしゃる方も多いので・・・。ショールームと言うよりカフェとして入り易くて、フラットに来て頂ければと思っているんです。(2022年8月12日掲載)⇒第六回座談会「⑦(仮)飛騨の家具を受け継ぎ繋げる」に続く・・・*8月26日掲載予定(毎週金曜掲載、次週8月19日はお休み)
●脚注:*1. 2023年稼働予定の飛騨産ジャパニーズウィスキーの製造を目指す飛騨高山蒸留所こと。詳しくは前話「家具の技術で樽を作る」にてご紹介しています。 *2.メーカーのショールームに来たお客さんが家具を買う事は、しごく当たり前の事に聞こえるが、元々メーカーが行うのは「製造」だけで、「物流」は商社や問屋が、「販売」はお店が行うのが一般的な商流であった。現代でもその商流は重要であるが、同時にメーカーが使い手の想いをリアルに感じられることを目的にファクトリーショップやアンテナショップという形で販売を行う商流も生まれている。ここで得られた消費者の情報を基に製品開発や販売促進を行うことでよりユーザーフレンドリーな活動が可能となるためとても大切な商流ですが、製造しか行ってこなかったメーカーにとって物流や消費者への販売は不慣れである。三窯の製造する食器であれば製品も小さいものでも慣れるまでは難しくあったため、家具の様に大きな製品では輸送や販売、その後のメンテナンスまで行うのは大変では無いか?という思いがあふれた司会担当の質問となった。 *3.製品を製造する全ての工程を自社で行う「一貫生産」と対をなす言葉が「分業生産」。これは工程の内、一部を外注と呼ばれるその工程を得意とした企業に製造依頼を行う方法。一貫生産は全ての工程を自社内で管理できるため計画的な生産が可能な反面、必要なスタッフの人数や作業スペースが増えコストが大きくなる恐れがある。分業生産の場合は、その逆のメリットデメリットが発生する。どちらが正しいという事では無く、それぞれの企業のスタイルにより選択されるし、品質においても専門家である外注の方が優れている場合もあるため、一概にどちらが良いという事では無い。
■過去の座談会記事一覧
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〉〉〉第四回座談会『美濃焼について思うこと』アーカイブはこちらから
〉〉〉第三回座談会『作り手の大切な器、我が家の食卓』アーカイブはこちらから
〉〉〉第二回座談会『作り手として感じる、それぞれの窯元の凄味』アーカイブはこちらから
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參窯その1:カネコ小兵製陶所(岐阜県土岐市下石町)https://www.ko-hyo.com/
參窯その2:作山窯(岐阜県土岐市駄知町)http://www.sakuzan.co.jp/
參窯その3:深山(岐阜県瑞浪市稲津町)http://www.miyama-web.co.jp/
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