（その他の質問/深山前編）気になる自社製品は？など-ミノウエバナシ特別編「三つの窯元に”七つの質問”」-

2023.07.21

-三つの窯元に”七つの質問”- 美濃焼産地で時代を意識しながらも自らのものづくりを全うするカネコ小兵、作山窯、深山の三つの窯元。その内なる想いを露わにするため、それぞれの代表に七つの質問を致しました。二つの質問には必ずお答え頂き、残りの五つは自由回答としてお話を伺いました。他社のスタッフがインタビュアーとなり、どの質問にどうお答え頂けるか？それぞれの窯元を想いをご覧ください。

-窯元情報-

・株式会社深山　http://www.miyama-web.co.jp/

・創業は1977年（昭和52年）、2022年に創業45年を迎えた。

・松崎社長は二代目として2009年（平成21年）に就任し14年目となる。

・企業理念は「うつくしいうつわ」。

・輸出用洋食器生産を目指し、創業来、鋳込み成形に特化した磁器メーカーとして製造。当初のOEＭ受託生産から2000年前後に開発室を作り自社オリジナルデザイン製品の開発を行う。2005年には物流機能として㈱ミヤマプランニングを設立。使い手とのつながりを求め続ける窯元。

（■その他質問について(前編)（語り手：深山　松崎社長、聞き手：カネコ小兵　伊藤祐輝）

　問③『気になる自社製品は？またその理由は？』

　問④『これから先も“やきもの”に生き残る可能性はあるか？』

　問⑤『 “産地としての特性”と“窯元としての個性”。どちらが大切か？』

　問⑥『スタッフとして一緒に働きたいのはどんな人？スタッフから刺激を受けた事は？』

　問⑦『顧客やユーザーからのハッとした気づきはありますか？』

–『深山として欠かせないもの』と『松崎社長の記憶に残る出来事』の二つのメイン質問について伺いました。あと五つ伺いたいのですが…質問③は『自社製品で思い出のある製品や気になっている製品はありますか？』です。-

ロングセラーの製品からは色々感じますね。代表的なものだと2004年に開発したコワケシリーズです。正直に言うと、デザイナーから企画があがった時は、これ売れるのか？と思いましたが、もう20年近く経って、未だに良く売れてるからすごいなと思ってます。

　この頃CADデータによる石膏の切削機を手に入れて、それを使って原型を制作した製品なんです。それ以前の仕切り皿は一つの仕切りを必要な数だけ複製してそれらを接着して仕切り皿を作っていた訳ですけど、そうするとその接着部分の厚みの調整が難しくなるというか、不必要な厚みがついてしまって積み重ねがスムーズじゃなかったりしてたんです。でもCADデータであれば、その厚みの変化を調整できて積み重ねもコンパクトになるんです。そういう点でもこの製品はCADならではなんですよね。

●2004年グッドデザイン賞受賞のコワケ9つ仕切

–デジタルでこんなに柔らかい雰囲気にできるんですね。-

　そうですね。あと、この製品もあって自分が良いと思うものと実際売れるものは全然違うっていうのは痛いほど理解しました。先日、三重県で販売イベントに参加したんですけど、そこでも痛感しましたね(笑)。深山は鋳込み成形に特化しているので、どうしても四角形や変わった形のものが多くなるんですが、まずそれが使い手からは敷居が高かったりするみたいなんです。使い易いものが良いから、やっぱり丸い製品が良く選ばれたり。深山の製品が持つ緊張感って自分たちが思っている以上にあるみたいで…。

　あと、サイズやアイテムもそうですね。ロングセラーと言ったこのコワケシリーズでもサイズによって売れ行きは異なっていますね、BtoBだとホテルのビュッフェで使われる『九つ仕切り』が良く売れるけど、家庭使いだとこの『三つ仕切り』が好評だったりと･･･。そうした点は、販売イベントに参加すると本当に勉強になりますね。小兵さんもこのあいだ出展してましたよね。

–そうですねクラフト市に出展しました。お客さんの層とか感度とか、器を買うことが変化して、ある種、時代の流れが良い方向に動いているのかなと思っています。そういう点では問④『これから先も“やきもの”に生き残る可能性はあるか？』は松崎社長はどう思われますか？生き残るとしても、どういう形で生き残るべきでしょうか？どういう可能性を想い描いているのか、お聞きしたいです。-

　もちろん美濃焼や焼き物が消えることは無いと思ってます。ただ、それが食器や生活用品みたいな道具としてだけだと、世界的な規模で販売をするためにいま生き残っている量産の工場の機械化は本当にすごいので太刀打ちできないことは間違いないです。でも、そういう人たちとは違うやり方があると思うので、無理に競わなくて良いと思っています。

●深山のものづくりを説明する松崎社長

深山は確かに技法的には鋳込み成形という生活用品の量産の技術を使ってるけど、その上で、もう少し手仕事を加えたり、すでにそうした事をしている作家さんとメーカーがお互い歩み寄ってものづくりをする事があっても良いかもしれない。素材やものづくりといった価値観を発信する。そういう生き残り方もあると思います。次の記事に続く（2023年7月21日掲載）＊毎週金曜掲載